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「俺らはどうせ残留争いのバジェットだよな?でも…」城福浩63歳の“基準”が生んだヴェルディ復活劇…J2で3位→J1で6位の理由を訊く【監督インタビュー】
今年の2月上旬だった。僕は沖縄県中城村で東京ヴェルディの合宿を眺めていた。
南国の温かな日差しの下、最後のメニューは20mほどのダッシュ。コーチの短いホイッスルで選手がスタートする。しかし、1本目が終わると監督の城福浩が笛を吹いて練習を止め、足元の赤いマーカーを右手で何度もさし示しながら、ものすごく強い口調でこう叫んだ。
「ここまでダッシュ、だよな? だったら、ここまで全力で走るんだよ!」
2本目のダッシュが始まる。マーカーの手前でスピードを落とす選手は、もう一人もいなかった。開幕まで3週間、16年ぶりのJ1の舞台はすぐそこに迫っていた。
トップチーム人件費は8億円弱。J1クラブの中で最下位
あの沖縄から約9カ月。飛田給駅のホームを吹き抜ける風は冷たくなり、2024年のリーグ戦も残すところ数節となった。
城福率いる東京ヴェルディは順位表で上から6番目にいる。試合内容も充実しており、しぶといし、ボールの支配を諦めないし、誰が相手でも恐れない。今季の観客動員数は前年比2.5倍。その数字は、ヴェルディのサッカーが魅力的であることを証明している。だが、公開されている'23年のトップチーム人件費は8億円弱。J1クラブの中で最下位だ(1位の浦和レッズは38.6億円)。
「ちょっと去年の話から、いや一昨年の6月から話をさせてもらいます」
城福はまずそう断ると、よみうりランドの裏手に30年ほど前から建つクラブハウスの古ぼけた会議室で話し始めた。
「自分がヴェルディに来た年、夏に主力が2人、冬に4人がチームを出ていきました。慰留はしましたが、このクラブにいても未来を見出せなかった彼らの決断は理解できました。翌年はほぼ一からチームを作りなおしです。昨季の予算はJ2でも11番目、我々が昇格争いをすると思ってた人はほとんどいなかったでしょう」
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