インターネットなんて想像の外。携帯端末のようなものはSF小説や漫画のコマにのみ存在した。固定式のダイヤルをジリジリと回してガールフレンドに電話をかけると、決まって不機嫌な声の父親が出る。娘につなぐふりして黒い受話器めがけて放屁した人なら知っている。筆者の伯父だ。
1970年代。通信技術と情報の質量がささやかな時代、なのに東京郊外の中学生は遠い異国に暮らすサッカーの王様の本名をそらんじていた。みんな専門誌の『サッカーマガジン』や『イレブン』の記事で覚えたのだ。
エドソン・アランテス・ド・ナシメント。国立市立第一中学サッカー部の名誉の一員である以上、ペレをペレで済ませるわけにはいかない。ペレ。一拍おいて、エドソン・アランテス・ド・ナシメント。そう続ける。
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