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「自分にムカつく気持ちと…」やり投・北口榛花、2018年の大号泣がコーチとの“インスタ経由の出会い”を導いた《連載「珠玉の1敗」》

2024/02/09
'18年の日本選手権は12位。'19年に初優勝、'20年は2位。'21、'22年は連覇
第一線で活躍するアスリートは、敗戦から何を学ぶのか――。日本女子やり投史上初の世界選手権・銅メダリストは5年前、あまりに不甲斐ない投てきを終え、人目も憚らず涙を流した。

【Defeated Game】
2018年6月23日 日本陸上選手権
女子やり投 12位(49m58)

   ◇

 歓喜のあまり涙が止まらなかった。オレゴンで開催された昨年7月の世界陸上、女子やり投。63m27を記録した最終6投目、渾身のスローを終え、北口榛花はスタンドにいるダヴィッド・セケラックコーチのもとに駆け寄って泣き崩れた。対照的にチェコ人コーチは満面の笑みを浮かべている。投てき種目において日本女子初のメダルとなる銅メダル獲得の偉業。どこか微笑ましいその表情のコントラストは、言葉も要らないふたりの信頼関係を示していた。

 5年前、日本大学3年時に臨んだ2018年6月の日本選手権――。新時代のホープとして期待を集めていた北口は一人きりで真逆の涙を流していた。1本目がファウルで2、3本目は50mにも届かない。力のないスローで8位入賞どころかよもやの12位に沈んだ。打ちのめされたこの大会こそが彼女にとって「珠玉の1敗」だった。

「いつもは練習より試合のほうが記録は上回るタイプなんです。下回ったのはこの日本選手権が初めて。大号泣しながらインタビューを受けて、誰も話しかけられないくらい泣きながら帰った思い出があります。悔しさっていうんじゃなくて、世界に飛び出していかなきゃいけないのに、私、何をやっているんだろう、と。自分にムカつく気持ちと自分の出来にガッカリする気持ち、そのふたつがあったように感じます」

 大きな不安を抱えて試合に臨んでいた。大学2年のときから指導者不在の状況となってしまい、先輩にアドバイスをもらいながらトレーニングする日々をすごしてきた。

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photograph by AFLO
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