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【ラグビーW杯総括】「デスゾーンでの“酸素”が不足して」日本がアルゼンチンに突き付けられた現実<試合後、ナントの路上で見た光景とは?>

2023/10/12
開幕節のチリ戦からゲームを重ねるごとに確実に強さを増したジャパン。だからこそ悔やまれる敗退だった。8強入りしたアルゼンチンとの差、そしてこのフランス大会を通じて見えてきた成果と今後の課題とは。

 せめてもうひと試合、日本の「成長」が見たかった。アルゼンチンに敗れたナントの夕方、それが偽らざる思いだった。振り返れば夏の国内外でのテストマッチ、あるいはW杯初戦のチリ戦と比べて日本は格段に練度を増していたからだ。

 7月、8月の試合は1勝5敗、「大丈夫? 日本?」という不安の声はあった。しかし、W杯に入ってから、日本は練り込んだ戦術と、自慢の修正能力によって確実に強くなっていった。

 初戦は、チリの元気さが目立ち、日本は受けに回った。大会前、リーチマイケルが「チリが狙ってくるとしたら、日本。だから、油断できない」と言っていたが、その通りの展開だった。セットプレー、ディフェンスと日本の弱点が再確認される一方、選手たちは初戦に勝ったことで緊張がほぐれた様子だった。

 そして第2戦、日本が成長を見せつつも、課題が浮き彫りになったのがイングランド戦だった。昨年11月に粉砕されたスクラムで後半途中まで対等に渡り合い、長谷川慎コーチが指導するスクラムの技術力の高さを証明した。そして相手防御線裏への短いキックを多用し、出足を鈍らせることに成功した。しかし「次の一手」が出なかった。安定したスクラムからの有効なアタックが見られず、キックも時に精度を欠いてFWの健闘を無為にした瞬間もあった。

 構想、分析は世界トップクラス。それでも、トライへとつながる遂行力に課題は残った。

 その不満を解消したのがサモア戦である。盤石のスクラムからのサインプレーが決まり、ようやく日本らしい「小気味よく、見て面白いアタック」が見られた。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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