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「日本人に対して妥協しなかった」ジェイミー・ジョセフHCから選手への“正解なき質問”【連載・桜の真実2019 第2回】

2023/10/21
悲願のW杯ベスト8進出を果たした日本代表の躍進は、いかにして成し遂げられたのか。選手、スタッフなど関係者への総力取材で真相を解き明かす連載ドキュメントの第2回。W杯開幕を1年後に控えた2018年秋、チーム内には、あらゆる面で「断層」が存在した。この時まだ、ジェイミージャパンは「ONE TEAM」ではなかったのだ。(初出:Number996号[隔号連載 第2回]桜の真実2019 ジェイミージャパン 正解なき質問に答えよ。)

 2018年9月。「ONE TEAM」になるためには、もう時間がなかった。

 ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフは、W杯の開幕まであと1年と迫った時点で、日本代表を取り巻く環境に苛立ちを募らせていた。

 チームは、2試合続けていいパフォーマンスを発揮できない。同年6月のイタリアとのテストシリーズでは、初戦は34対17と快勝したにもかかわらず、2戦目は22対25と敗れた。ひとつ勝つと満足してしまう。これでは、W杯でプール戦4試合を戦い抜くことなど不可能だ。

 それに、日本人と海外出身選手の融合も図らなければならない。そのために、こちらの思いを素直に伝えよう。

 ジェイミーは通訳の佐藤秀典の助けも借りながら、日本人と海外出身選手の長所、短所などをまとめたプレゼンテーションを9月の和歌山合宿で行なった。

 ヘッドコーチが話す内容を聞いて、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズ、そしてジェイミーと3代の指揮官にわたって、10年ほどジャパンに携わってきたトレーナーの青野淳之介は、少なからずショックを受けた。ジェイミーは、一切の遠慮なしに意見をぶつけてきたのだ。

 日本人は協調性が高く、命じられたことは最高水準の仕事で応える。ただし、完璧主義が高じて、失敗を恐れるあまり、チャレンジしない。慎重すぎるのだ。

 それに咄嗟の対応力に欠けるし、命じられたこと以外は、なかなか動こうとしない。そして、自分の意見を主張することを極端に恐れる。

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photograph by Getty Images

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