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《受け継がれるV7の遺伝子》神戸製鋼に残る平尾誠二のレガシーとは何か?<山中亮平、萩本光威らの証言で辿る>

2023/10/12
ミスターラグビーこと平尾誠二
かつて「ミスターラグビー」によって率いられ、日本選手権を7連覇した真紅の男たち。一時の低迷を脱して昨季リーグを制覇した裏には、NZの知将が掘り起こしたクラブの財産がある。(初出:Number996号[甦ったV7の遺伝子]神戸製鋼 平尾誠二のレガシーを見よ。)

 神戸製鋼コベルコスティーラーズは、今年も強い。

 1月12日のキヤノンとの開幕戦、西のオールドファンからは安堵の声、西高東低に抵抗がある東のファンからはやっかみが聞こえてきそうなほど、80分の中で圧倒的な力を見せた。

 FWが細かいパスで崩す。相手の守りにほころびが生まれれば、世界最優秀選手賞3度受賞の元ニュージーランド代表SOダン・カーターに導かれたBKが、相手のガードが緩んだところをめがけ走り込んだ。FWもBKもポンポンとつないで波状攻撃を仕掛けると、キヤノンの日本代表ハーフ団、SH田中史朗─SO田村優が仕事をできない。15季ぶりに日本一に輝いた昨季と同様、局地的にも大局的にもボールがよく動き、7トライを挙げた。

©Shinryo Saeki
©Shinryo Saeki

 この日の神戸ユニバー記念競技場には、開幕8試合で最多の2万3004人が入り、西も東も関係ない新しいファン層の姿があった。開門を待つ列の先頭の母娘は、試合開始7時間前の午前6時から並んだ。中3の娘がW杯に感動。岡山から前泊して初めてラグビー観戦にやってきていた。そんなスタンドの新顔にも古株にも、神戸製鋼のパスラグビーは心が弾むものだったはずだ。クールそうに見えて実は熱血、日本代表のFB山中亮平の言葉にも熱が帯びた。

「お客さんがこれだけ来てくれてうれしい。ラグビーを一生懸命やって、見ている人に楽しさを感じてほしい」

監督、ヘッドコーチを置かない「キャプテン制」

 かつても神戸製鋼のラグビーはファンを魅了していた。

 不世出の名BK、平尾誠二が司令塔だった1989年から1995年まで日本選手権を7連覇。その間、公式戦の連勝を71まで伸ばした時期があり、まさに常勝軍団を築き上げたのだ。

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photograph by Takao Yamada

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