#996
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「高校時代から大切にしている『想像力』」姫野和樹の妙技“ジャッカル”は、いかに生まれたか。<実は日本だけの用語?>

2023/10/04
ラックが形成される前に、倒れ込んだ選手に絡みつき、ボール奪取や相手の反則を狙う高等技術「ジャッカル」。窮地を覆すターンオーバーへと繋がる一瞬の隙を、姫野はいかに嗅ぎ分けるのか。その秘密に迫る―。(初出:Number996号[起死回生の妙技]姫野和樹のジャッカルを見よ。)

 ジャッカル。

 ワールドカップのサモア戦。後半9分に姫野和樹が相手のボールに絡み、反則を奪った瞬間から、この言葉がたくさんの人に使われるようになった。

 このジャッカル、海外ではあまり使われず、日本だけで流通している言葉と思った方がいい。その由来は、相手からボールを奪取するのがうまい元豪州代表のジョージ・スミスが2011年にサントリーに加入、彼のニックネームが「ジャッカル」になったことが起点だ。トップリーグで見せるスミスの技術はそれこそ超一流で、ターンオーバー奪取を連発。それがいつの間にか、動詞へと発展を遂げた―というのが定説だ。

 もともとラグビーという狭い世界での言葉だったが、W杯での姫野の活躍によって爆発的に広まり、いまや一般名詞へと発展したというわけである(実際に、年末の居酒屋で使われているのを目撃した。しかし下品な内容だったので、ここでは省略)。

 今回、姫野の「ジャッカル論」を書くにあたり、昨季からの姫野がターンオーバーを奪うシーンをつぶさに見たが、驚いたことに、ひと口にジャッカルと言っても、姫野の場合は多様な種類があることが分かった。

W杯でボールを持つサモア選手に果敢に飛び込む姫野。代名詞の「ジャッカル」でチームの窮地を幾度も救った ©Asahi Shimbun
W杯でボールを持つサモア選手に果敢に飛び込む姫野。代名詞の「ジャッカル」でチームの窮地を幾度も救った ©Asahi Shimbun

 まず、忘れがたいサモア戦でのジャッカルのシーン。サモアの密集周辺でのアタックが続き、日本にとってはもどかしい展開が続いていた。あるフェイズで、LOのヴィンピー・ファンデルヴァルトがタックルに入ると、姫野は当初、ダブルタックルに入るような動きを見せる。しかし、相手が倒れてしまうと、「ジャッカル姫野」が発動する。

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photograph by Shunichi Oda

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