#993
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「ライオンハートが必要です」ラグビー日本代表“七人の侍”とジェイミーが共有した「聖堂」とは?【連載・桜の真実2019 第1回】
2023/10/20
悲願のW杯ベスト8進出を果たした日本代表の躍進は、いかにして成し遂げられたのか。選手、スタッフなど関係者への総力取材で真相を解き明かす連載ドキュメントの第1回。2019年4月、ニュージーランドへと遠征していた指揮官は、ある光景を目にする。その時生まれた閃きが、チーム・ビルディングの核となるコンセプトへ昇華していった。(初出:Number993&994号[短期集中連載 第1回]桜の真実2019 ジェイミージャパン ライオンハートの絆。)
ニュージーランドの南島にあるダニーデン。3月から4月、日本では桜の季節を迎える時分だが、季節が真逆の南半球では、ようやく秋が到来し、ラグビーシーズンが本格化しようとしていた。
指揮官ジェイミー・ジョセフは、’19年2月からおよそ7週間にわたる代表強化合宿を打ち上げると、次なる準備に取り掛かった。選手たちは二手に分かれ、ひとつのグループはサンウルブズに合流し、もうひとつは「ウルフパック」と呼ばれる特別チームを編成。南半球へと遠征した。
ジェイミーはサンウルブズに選手を派遣することに消極的だった。消耗の激しいスーパーラグビー(SR)に参戦することが、必ずしも代表の強化につながらないと憂慮していたからだ。
サンウルブズに参加すれば、毎週のようにやってくる試合に対処しなければならなくなる。特にフィットネスとストレングスの両面では強化というよりもメンテナンス、治療に主眼が置かれてしまう。それに試合が続くと頭脳の疲労も重なる。それならばと批判覚悟でSRには代表主力選手を出さず、地道に土台を作ることを優先させた。
4月、ダニーデンに入ったジェイミーは、市内で建設中の聖堂でゴミ拾いをしている人を見かけた。
「立派な聖堂が建つんですね」
ジェイミーがその人と話をしているうちに、彼が単なる清掃員ではないことが分かった。その人は、聖堂建築において重要な役割を担っているスタッフだった。職位の高い人が、現場でわざわざゴミ拾いをしている――。
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photograph by Takuya Sugiyama