#822
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「自分はこんな感情なんだ、という心が見えてきた」羽生結弦、18歳の果てしなき“欲望”【2012-13シーズンplayback】

2013年に発売されたNumber822号より
この若者は一体、どれだけの可能性を秘めているのか。 「誰よりも強くなりたい」と願って新天地へ渡ると、豊かな感受性を武器に、見聞きするもの全てを糧とし、鋭敏な観察眼と分析力で、弱点を一つずつ克服していく。努力はやがて実を結び、驚くべき得点を叩き出しながら、大舞台で輝きを放つ。情熱と野心溢れるスケーターが目覚ましい成長を遂げていった、半年間の軌跡を追った。(初出:Number822号[密着ドキュメント]羽生結弦「18歳、果てしなき欲望」)

「いつも心を開いているんです。見たもの感じたもの、すべて吸収する。だから逆に、自分の心も正直に出す。心を開いていなきゃ、何も吸収できないし、面白くないでしょ」

 18歳の若きアスリート、羽生結弦。'12年の世界選手権で銅メダルに輝くと、今季はショートで世界歴代最高点をたたき出し、GPファイナルでは銀メダルを獲得した。他に類をみないほどのペースで、なぜ成長し続けられるのか。理由を問うと、彼は言う。心を開いているから、と。その言葉の意味するものは何か――。半年間にわたる、羽生の心の動きを探ってみる。

Yukihito Taguchi
Yukihito Taguchi

 

 羽生の今シーズンは、練習環境を探すところから始まった。世界の頂点を目指すために、故郷の仙台を離れ、新しい刺激を求めたい。トロントに心を決めるまで、彼はあらゆる選手を観察し、分析した。

「ジェレミー(アボット)は視線のずっと先まで演技の空間があって、観客みんなが目が合った気持ちになる。ジャンプのミスをカバーできる演技だ。パトリック(チャン)のスケートはすごい。あれは北米のよく滑るスケート。ハビエル(フェルナンデス)は上半身と下半身が一体になった流れがあって、あれこそブライアン・オーサーが教える滑り。4回転の確率は一番高い。(ミハル)ブレジナはエッジの正確なところが好き。(髙橋)大輔さんは別世界でスゴすぎる。(アレクセイ)ミーシン先生は自分のスケートに近い感じだけど、プルシェンコそのものになっちゃう」

 とにかくすごい観察眼だ。そして自己分析をし、どの環境が自分に最適かを考えた。

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photograph by Tsutomu Kishimoto

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