#822
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「ユヅルは滑りに全身をゆだねてしまう」18歳の羽生結弦に“天才”を感じる理由【恩師オーサー、盟友ハビエルらの貴重な証言録】

「天賦の才能」を彼はどこまで伸ばし、開花させることができるのか。周囲の証言を通してその可能性を探る。(初出:Number822号[徹底分析]ユヅルが天才である理由。)

「ユヅルを初めて見たのは、確かソフィア世界ジュニア選手権でした。体は小さかったけれど、なんという才能だろうかと思った。長年フィギュアスケートを見ていると、これぞという逸材はすぐにわかるんです」

 そう語るのは、20年以上フィギュアスケートを取材してきたドイツのジャーナリスト、タチアナ・フレイドである。’09年のソフィア世界ジュニア選手権で12位だった羽生は、翌年のハーグ世界ジュニアで日本男子として史上4人目のタイトルを取った。

 4回転などをこなす体力を要求される男子にとって、ジュニアからシニアへ移行する壁は女子よりも厚い。髙橋大輔も小塚崇彦も、世界ジュニアチャンピオンになってからシニアの世界の表彰台に到達するまでに5年の年月を要している。だが羽生はシニアに上がってからわずか2年後、ニースでの世界選手権で銅メダルを手にした。17歳は日本男子最年少記録である。フレイドはこう続ける。

「日本の男子にしては珍しい、早熟な選手だと思いました。でも4回転も降りていたし、メダルを取ったのは、全然驚きではなかったですね」

 ロシアや北米からは、ごくたまに10代で完成品に近い天才肌も出てくる。だがこれまでの日本の男子は世界基準で見ると早熟ではなかった。若い頃は演技にはにかみや照れ、緊張がにじみ出る。そして経験を重ねるにつれてジャッジや観客に視線を向け、堂々と表現できるようになる。どの選手もそんな成長段階を経ていくのを、私たちは目撃してきた。

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photograph by Mami Yamada

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