する方のスポーツは苦手で、ただただ走るだけの長距離走は、何が楽しいんだろうと訝しく思っていた。小説としてのマラソンや駅伝は面白い。選手の葛藤やレース展開、順位の浮き沈みなど、ドラマ性が高くて引き込まれる。けれど現実に戻れば、自分とかけ離れた世界であることに変わりはなかった。
それが『シティ・マラソンズ』では、初めてやってみたいという衝動にかられた。走れる人が羨ましくなった。
本書の執筆者は三人。舞台となる都市も三カ所。ニューヨークと東京とパリ、そこで開かれるマラソン大会を軸に話は進む。各話の主人公のうち、ふたりは長距離走の経験者で、ひとりはバレリーナを目指していた。元アスリートという点、それも皆、華々しい功績を残しての引退ではない点が共通している。自ら見切りを付け、走ることから遠ざかっている。
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photograph by Sports Graphic Number