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<言葉の力をめぐる一省察> イビチャ・オシム 「感じたことを率直に、そして真摯に語るべきだ」

2014/04/14
理想を具現化する上で、指導者の発する
言葉の重みと効果的な伝え方とは――。
日本サッカーのさらなる前進を望む名将が、
豊富な経験と深い愛情をもとに伝授する。

本日発売の『NumberPLUS イビチャ・オシム 日本サッカーに告ぐ2014』より、
ザックジャパンの転機となった2011年のアジアカップ制覇直後に、
クロアチアの地で語ったオシムの金言を、特別に公開します。

 イタリア国境に近いクロアチアの港町プーラ。アドリア海沿岸でも屈指の保養地に、イビチャ・オシムはアシマ夫人とともに滞在していた。アマルが率いるジェリェズニチャル(ボスニアリーグ2009-2010年優勝)が、ここで合宿を行なっている。息子に招待されての訪問は、自らのリハビリも兼ねていた。こけた頬と精悍な眼差し。歩くスピードも、これまでのどのインタビューのときよりも速い。

 同じホテルにチェックインしたわれわれの食事が終わるのを待つのももどかしげに、オシムは語り始めた。尽きることのない言葉は、ジェーリョ(ジェリェズニチャルの愛称)の練習試合を見た後、夕食の席でも続いた。

「ところで今回のテーマは、監督の言葉とコミュニケーションについてです」

 彼が一息つくのを待ってそう告げると、すかさずこんな答えが返ってきた。

「それこそ私の好きなテーマだ。常に誰かとそのことを喋っているからな」

 スピリッツァと白ワイン。好みの飲み物で適度に舌を湿らせながら、瞬時に様々な思いを巡らせた彼は、寛いだ様子でますます饒舌になっていく。

努力をしなければ運は勝手に転がってはこない。

「アジアカップ(2011年1月)での日本は、いい兆候がたくさん見られた。若い選手たちが、チームにさまざまなものをもたらした。特に、李忠成のボレーシュートが象徴的で、技術のための技術ではない、実践的で効率的な技術だ。あのように蹴れる選手は多くはない。私の知る限り、ジダンが2002年のチャンピオンズリーグ決勝で同じようなシュートを決めた。本能的な動作だが、彼らのように反応できないことも多い」

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photograph by Takuya Sugiyama

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