ドイツの地で頂点に立ったアズーリの指揮官は、批判にとらわれず、虎視眈々と偉業達成を狙う。
胸に誇りを秘める智将の言葉に、耳を傾けよう。
いつの時代も優勝の最有力候補はブラジル。しかし、1930年のジュール・リメ杯からの通算18回のW杯で、ブラジルが制したのは5回。大会ごとに“史上最強”と謳われてきたブラジルでさえ5回に留まる、と言うべきだろう。確率は3割にも満たない。これは世界の頂点へ到達することが、どれほど難しいかを雄弁に物語る数字だと思う。
一方で、我々イタリアは最有力候補に挙げられたことは一度としてない。強豪国とはみなされてきたものの、あくまでそのなかの一国に過ぎなかった。技術面、とくに足下のテクニックでは、ブラジルと比較すると大きく劣っており、その差はいかんともし難い。彼らに遠く及ばないというのが現実だ。まともにやれば当然のことながら勝ち目はない。多くの人がそう思うとしても、何ら不思議ではないのだ。
だが、それでも我々は、最強ブラジルに次ぐW杯制覇4度の実績を積み上げてきた。
なぜか。
それはイタリアが常に、技術的には太刀打ちできないという事実を認識し、違う手段で戦う工夫を重ねてきたからだ。
我々には我々の特徴があり、それを最大限に引き出すための策を追求してきた。その過程でイタリアはカテナチオを生み出し、時代の変化に応じてその形を更新している。'06年大会の結果が示す通り、我々は他ならぬ伝統の堅守と速攻を武器に世界の頂点まで到達したのだ。
今回もイタリアの基本姿勢に変わりはない。出来ないことはやらない、という姿勢だ。あくまでも我々らしく戦うことが大切だと私は考えている。堅守速攻を可能にするには、組織としての強固な力を持つ以外にない。それなくして我々のサッカーが列強と対等に渡り合えないことは、これまでの歴史が証明している。だからこそ私は、今回も'06年のメンバーたちを軸にチーム作りを進めてきた。
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