バロンドールに輝いたアルゼンチンの怪物は、かつてマラドーナが君臨した領域に駆け上がる。
後悔にまみれた4年前の思いを胸に、バルサの10番は南アフリカへ乗り込んでいく。
自らに残された最後の栄冠を手にするために。
後悔にまみれた4年前の思いを胸に、バルサの10番は南アフリカへ乗り込んでいく。
自らに残された最後の栄冠を手にするために。
4年前のベルリンで見た光景を、リオネル・メッシは忘れることができないという。
準決勝進出がかかった、ドイツとの一戦。1-1で進んだ試合は延長戦でも決着が付かず、勝負はPK戦へと持ち込まれた。
エステバン・カンビアッソが蹴った最後のペナルティーキックを、メッシは遠くベンチから眺めていた。
そのキックはイェンス・レーマンに綺麗に弾かれ、そしてアルゼンチンの大会敗退は決まった。
英雄となったゴールキーパーの下へ走っていくドイツ人たち。両手で顔を覆い泣き崩れるカンビアッソを遠目に、ベンチ前のメッシはうつむいていた。
「あの時はドイツに勝って準決勝にいけると信じていたんだけど……。もちろん、ドイツ戦でもチームを助けるためにピッチに立ちたかった。それだけにあの敗戦はショックだったんだ」
この試合、メッシがピッチに立つことはなかった。
ドイツワールドカップでホセ・ペケルマン監督が攻撃陣の軸としたのは、“10番”を付けるフアン・ロマン・リケルメと、エルナン・クレスポ、ハビエル・サビオラ、カルロス・テベスの4人だった。
メッシの起用を望む世間に対し、ペケルマンは「メッシは怪我明けだ。ベストの状態だったら考慮するが」と口にしていたが、大会前からメッシ抜きの構想は固まりつつあった。
メッシが幼い頃から憧れていたワールドカップの舞台。18歳で迎えた自身初となるドイツ大会で、彼はほとんどプレーすることができなかった。
バルセロナでの活躍が世界に知られ、メッシは新星として大会前から大きな注目を浴びていた。
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photograph by Getty Images