特別増刊
巻頭特集

記事を
ブックマークする

<ナンバーW杯傑作選/'06年8月掲載>オーストラリア戦「『魔の8分間』の正体」~ヒディンクの完全なる戦略~

2010/05/31
「選手たちを誇りに思う」。W杯初戦終了後、ヒディンクはそう胸を張った。
 前半に不運な失点を喫しながら、終盤の8分間で3得点を叩き込んでの逆転劇。
 勝ったオーストラリアは後に16強入りし、負けた日本はグループリーグで消えた。
 彼我の明暗を分けた“魔の8分間”。その本質は、どこにあったのか――。

「初戦の最後の8分間がすべてだった」

 ブラジル戦後の記者会見で、ジーコは苦しげにグループリーグ敗退の原因をそう語った。

 中村俊輔のクロスから幸運な先制点を獲得した6月12日のオーストラリア戦。その後は相手の猛攻を凌ぎ、辛くも勝ち点3をもぎ取るはずだった。ところが、ロスタイムを含めた8分間で3点を叩き込まれ、ジーコジャパンは悲劇的ともいえる惨敗を喫したのである。

 対するオーストラリアはその後、見事にグループリーグを突破。決勝トーナメント1回戦でイタリアに敗れたものの、後の優勝国をあわやというところまで追い詰めている。

 オーストラリア代表監督フース・ヒディンクは“魔の8分間”を演出したことで日本を絶望の淵に追いやり、逆に己のチームに勢いと自信を与えたのだった。

「日本戦はすべてプラン通りだった」

 ヒディンクのアシスタントコーチを務めたグラハム・アーノルドはそう胸を張った。

「我々は事前に様々なケースをシミュレーションしていた。1-0でリードしているとき、同点のとき、怪我人が出たときなどシナリオは何パターンもあった。日本戦では、『残り15分で0-1の状況』という想定シナリオ通りに手を打ったまでさ」

 日本が3-5-2システムで戦ってくることを事前情報でキャッチしていたヒディンクは、3-6-1を採用。中盤を厚くし、パスの出し手である中村と中田英寿を封じる策に出た。加えて、サイドが得意なエマートンをあえてセンターハーフに起用。これは、「空中戦を仕掛ける際に、日本のカウンターに対応できる、スピードのある選手が中盤に必要だった」(アーノルド)ためだ。

会員になると続きをお読みいただけます。
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

0

0

0

前記事 次記事