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広島で仁義なきサウスポー抗争勃発!?
チーム浮沈の鍵を握る左腕投手。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/08 10:30
2010年に引退した、かつての左腕エース・高橋建の背番号「22」を引き継いだ中村恭平。入団会見で宣言した通り、キャンプ中から打者のバットをへし折る剛速球で注目を浴びている
ローテを守る齊藤も「意識している」と対抗心を告白。
ブルペンでの白熱したピッチング練習の背景には、その場にいた者たちの秘めたる闘志があったのだろう。
大野コーチは続ける。
「中村恭の球は速いな、いい球を持っているじゃないかと思った選手もいたかもしれないし、岩見の独特なフォームに個性を感じた選手がいたかもしれない。そういうことを感じてくれればね、我々としては面白い展開になりますよ」
チーム内で自然と発生した切磋琢磨の雰囲気というのは、首脳陣が叱咤して作った雰囲気よりも何倍もの価値がある。ローテーション・ピッチャーである齊藤の口からさえも「僕自身は(同じ左腕投手を)意識している」という言葉が飛び出すほど、その危機感を募らせているのだ。
新人同士の意地の張り合いはチーム全体にプラスをもたらす。
沖縄での一次キャンプ、日南での二次キャンプを終え、広島は実戦を重ねている。取材直後のオープン戦では、中村恭、岩見ら新人を含めた4人の左腕が1試合中に登板。全員が無失点で切り抜け、岩見が勝利投手となった。また、2月26日のソフトバンク戦でも、先発した齊藤ら4投手が登板。齊藤こそ1失点したが、他の全員は無失点。27日のソフトバンク戦、3月2日の中日戦もまた、左腕投手は無失点だった。
誰もが一歩も引けない状況での戦いに身を置いている。
広島の左腕の好投が、時々メディアを通して伝わってくると、あの時のキャンプでのブルペンを思い返してしまうのだ。
今季の広島は「左腕」。
チーム浮沈の鍵は、彼らが握っている。