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広島で仁義なきサウスポー抗争勃発!?
チーム浮沈の鍵を握る左腕投手。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/08 10:30
2010年に引退した、かつての左腕エース・高橋建の背番号「22」を引き継いだ中村恭平。入団会見で宣言した通り、キャンプ中から打者のバットをへし折る剛速球で注目を浴びている
沢村賞の前田を筆頭に、充実している右腕に比べ……。
低迷を続ける広島にとっての緊急課題は左腕投手にある。
昨季沢村賞を獲った前田健太や復活が期待される大竹寛、2年目で新人王候補の今村猛ら(さらに言うとドラフト1位の福井優也を含めて)右投手の充実ぶりは目覚ましいが、左腕事情はいまだに厳しいと言うしかない。
プロ6年目の齊藤悠葵はローテーション・ピッチャーだが、それに見合う成績を残せているとはいい難く、先発陣全体を考えると、育成から這い上がったソリアーノにまで頼らざるを得ないのが実情だ。
大型左腕の篠田は故障が多く、青木高広、大島崇行ら中継ぎ陣もいまだ安定感を欠いている。
特徴的な決め球を持つ三者三様のルーキーが激しく競う。
今季はいわば、素材がありながら実績を積み上げられていない既存の左腕投手陣の中に、3人の新人左腕がドラフトで一度に入ってきたことになるのである。
2位で入団した中村恭平は、長いリーチからのしなるような腕の振りが特徴。ストレートは150キロを計測し、キャンプ中の打撃練習では主力打者のバットをへし折った。
3位の岩見優輝は変則的な投球フォームから多彩な変化球を操る。球の出どころが見づらいという点でも評価が高い。
4位の金丸将也は反動をつけて投げるフォームに難を感じるが、187センチの身長から振り下ろされる角度ある速球が魅力だ。
三者三様の特長を持った新人がキャンプから一軍入りし、貴重な左腕候補として競争を激化させている。
「たまたま。意図していない。偶然に左の4、5人が一緒になっただけですよ」とほくそ笑んだのは大野豊一軍投手チーフコーチである。これほど特長を持った左腕が一度に並ぶと、大野コーチの心中、さぞ心強いだろうと直撃してみたのである。
「彼らがどう思っているかは分からないですけどね、僕が現役の時は、新人が入ってくるたびにいろんなことを思ったもんですよ。『○○選手は騒がれているけど、意外に大したことないな』とか、『△△選手、思っていたよりやるじゃないか』とかね。そういうのは口に出さなくても、絶対持っているはずなんですよ」