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江川卓とのトレードで「阪神に入って涙が出た」23年前に生前の小林繁が語っていたこと…「巨人を出されたのが、不思議でしょうがないよ」
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元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph byBungeishunju
posted2026/08/16 11:00
江川卓とのトレードで阪神に移籍した小林は驚異的な成績を収めたが、自分では移籍と両チームのことをどう考えていたのか?
阪神には日本シリーズをやるなんて意識はない
「ユニフォームを着る前の時点で全然違う。阪神にはそんな意識はないから(笑)。巨人の選手にとって、日本シリーズは自分たちの生活の中にあるもの。しんどいけど、僕たちがセ・リーグで勝って日本シリーズも戦うという意識で、1月からグラウンドに入っていく。阪神は2月1日から10月まで。巨人とは野球をやっている期間が全然違うんですよ」
球団としての歴史は遜色ないが、伝統が違うとも言った。
「組織そのものが何を目指すのか。そこをテーマに置いて、個人を教育して、人間形成まで徹底してやるのが本当の組織。川上哲治監督がそれをやったわけですよ」
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組織としての考え方を新人に教え込むのが先輩やコーチ、寮長などの仕事でもあった。
「巨人では、『巨人のために死ねる』という教育ができていた。でも阪神は自分のために生きる球団。だから、監督も含めて、個人個人が勝手気まま。それでは組織としては戦えないんですよ」
巨人には血の掟があった
小林は自身が巨人で受けた「教育」についてこう語った。
「一軍で5勝くらいしていた時に寮の門限を破ったことがあって……寮長にロッカーに呼び出されて、ボッコボコよ(笑)。『ええか、うちは巨人や。5勝、6勝は誰にでもさせることができる、自分の力で勝ったと思うなよ』と言われた」
寮長からの「おまえの代わりはいくらでもいる」というメッセージが若い小林の胸に刺さった。
「僕はもう巨人で5勝するピッチャーなのに……とも思ったけどね。あの時、憎しみはなかった。やっぱり反省した。組織に入るという経験がなかったから、それは効いたよね。だから、巨人というチームの価値観がよくわかった。個人の力で勝つ野球をするチームを見切るようになる。
寮長が考えたのは小林繁という選手のことじゃなくて、組織のこと。巨人という組織が中心だから。個人が増長したり、組織を乱したりということは絶対に許されない。巨人には昔、血の掟があったわけ」
現在の基準で考えれば、かなり物騒な言葉に聞こえるが、任侠映画好きの小林ならではの表現だった。

