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「だろうな…って感じですね」平野歩夢もリスペクト…スノーボード・國母和宏が明かした16年前「反省してま~す」事件の真相「えーって思うほどバカじゃない」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byJIJI PRESS

posted2026/02/14 17:18

「だろうな…って感じですね」平野歩夢もリスペクト…スノーボード・國母和宏が明かした16年前「反省してま~す」事件の真相「えーって思うほどバカじゃない」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2010年のバンクーバー五輪で服装を巡ってバッシングを受けたスノーボードの國母和宏。喧騒の渦中で本人は何を思っていたのだろうか?

 國母は現在、比重を100%、フリーライディングの世界に置いている。今後、競技に戻ることは、おそらくないという。

「フリーライディングって絵に似ていると思うんです。どんなラインを描いてもいい。ほんと、自由なんです。決められたジャンプ台で、すごいトリックをできる人は、いくらでもいる。でも自分は、そういう人をびっくりさせたい。同じトリックを、すごい山の、すごい地形で、やってやろうって」

 そのためには、アスリート以上に肉体を鍛え、感覚を磨き続けなければならない。國母は、すでに引退の時期を見据えている。

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「常に攻めるスタイルを大事にしているので、体も、精神的にもきつい。この状態をどこまでキープできるか。あと5年ぐらいじゃないですかね」

 いまはカリフォルニアを拠点にし、1年の半分以上を海外で過ごす。日本にいるのは4カ月程度だ。家の前には広い畑をつくった。

「土いじり、好きなんですよね」

批判の声への本音は…「だろうな、っていう感じですね」

 取材の最後に、こう聞いてみた。

――バンクーバー五輪のとき、服装を批判されて「なんでだよ」と思った?

 すると、意外な答えが返ってきた。

「いや、だろうな、っていう感じですね。えーって思うほど、バカじゃない。学校でも制服を着崩してたら注意されるじゃないですか。ただ、日本代表じゃなくて、俺はプロスノーボーダーの國母和宏として行ってたから。そこを変える気はなかった」

 ふと、おかしみがこみ上げてきた。確信犯――。そう、彼は、演じていたのだ。

「國母と言えば、勝手気ままで、無愛想」

 そんなイメージが定着してしまったが、プロとして、誰よりも人に見られることを意識している。

「プロは見てくれる人がいなきゃ、単なる自己満(足)になってしまう。それは常に考えてますね」

 インタビュー後、喫茶店の外の、何でもない通りの、何でもないコンクリート塀の前で写真撮影を行った。まるでモデルのように、ときにレンズをにらみ、ときに視線を地面に落とす。無個性な壁が、かえって國母の強烈な輪郭をはっきりと浮かび上がらせていた。

 このシチュエーションで、これだけ絵になる日本人アスリートはそうはいまい。

 國母の誤解を解いてやろう――。今回の取材で、そんな偽善にも似た同情心があったことを恥じた。

 バンクーバー五輪のとき、露骨に不快感を示した人も、そういう見方を狭量だと責めた人も同じだった。結局のところ、私も含め、國母の圧倒的な存在感に搦め捕られ、振り回されていただけだった。

 國母はあのときも、今も、我々が住む狂騒の世界とは無縁の、自分が信じる価値観の中で生き続けている。いいも、悪いも、ない。

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國母和宏「反省してま~す」事件はなぜ起きたのか…本人が明かした16年前の“腰パン・スキャンダル”のウラ側「プロスノーボーダーとして行ったから…」

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