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「だろうな…って感じですね」平野歩夢もリスペクト…スノーボード・國母和宏が明かした16年前「反省してま~す」事件の真相「えーって思うほどバカじゃない」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2026/02/14 17:18
2010年のバンクーバー五輪で服装を巡ってバッシングを受けたスノーボードの國母和宏。喧騒の渦中で本人は何を思っていたのだろうか?
確かに、國母の人となりを理解さえしていれば、服装など些末なことだ。ただし、人物を知らない人からすれば、服装が「すべて」になり得る。國母の騒動は、まさにその典型例だった。
すでに戦闘態勢に入っていた國母は、バンクーバー空港で待ち受けていた報道陣の質問に無言を貫いた。その姿を見て同じく代表で、チーム最年長の26歳だった村上大輔はわずかに懸念を抱いたという
「これは、ちょっとまずいかなと思った。印象が悪いなと……。カズはいったん試合モードに入ると誰も話しかけられなくなっちゃうんですよ」
「連盟の上の人から、大変なことになってるぞ、と」
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日本人の一般的な正装感覚とはかけ離れていて、かつ不気味なほどに集中していた。ことの発端は、それだけのことと言えばそれだけだった。
当時監督を務めていた萩原文和はバンクーバーに先乗りしていたため、國母の出国時の恰好については知らなかった。萩原が振り返る。
「連盟の上の人から、大変なことになってるぞ、と。視聴者から苦情が殺到していたらしくて」
ひとまず國母は10日の選手村への入村式を欠席。綿谷の記憶ではこの日の晩、國母は淡々とした様子で自分の部屋を訪れ謝罪したという。
「迷惑をかけてすいませんでした、と。頭のいい子なので起きていることは理解していたと思います」
國母はスノーボードチームの合同記者会見にだけは出席した。
ところが案の定、質問は國母の服装問題に集中する。入村式を欠席したことについて、ある記者に、それは世間の批判を受け止めたということでいいかと念押しされると一度は嫌な顔をしたが、すぐに「反省してます」と発し、最低限の体裁は整えた。
会見が終了し萩原は「いやー、やっと終わったよ」と一件落着したものだとばかり思っていた。
ところがこの会見は火に油を注ぐ結果となる。会場には聞こえなかったが「反省してます」の直前、國母は記者の質問に対し小さく舌打ちをし、「うっせえな」とつボやいていた。
その音声を、テレビ局のマイクが拾っていたのだ。また、聞きようによっては「反省してまぁす」と、「ま」と「す」の間を伸ばしているようにも聞こえた。とはいえほんのわずかだ。にもかかわらず、この会見報道は「チッ、うっせぇな」と「反省してま~す」の、ことさらオーバーに活字化された2つのコメントだけが独り歩きする結果を招いた。

