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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「今思えば、それが遺言でした」急逝した高校バレー名将が最後に託した“小さな2人のキーマン”…逸材2年生エースを支えた常勝軍団・鎮西の結末
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2026/01/14 11:01
優勝した東山高校に準々決勝で敗れ、「高校3冠」を逃した鎮西高校
ここで奮起したのが岩下だった。1年時からレギュラーを担い、試合出場を重ねてきたが、好不調の波が大きい岩下に対して畑野監督の評価はいつも厳しかった。
「あの子はすぐポカする。大事な時に上げても決まらんでしょ」
ただ、辛辣な言葉の最後にはいつも、期待が含まれていた。
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「あの子が成長して決まれば、もっと楽に勝てるんですよ。力は十分、あるんですから」
第3セットは岩下のスパイク得点で口火を切ると、バックアタックも含めた攻撃とサーブが冴え、高い決定力を発揮し、フルセットの末に勝利を収めた。
鎮西の強さを称賛したのは、敵将・北川監督だ。
「フィジカルやメンタル、セットを取られた後に立て直すだけでなく1つギアを上げられるのがさすがだな、と。今までの春高で、僕たちは何度かシード校と初戦で対戦したことがあって、2回勝っています。その時はこちらが1セット取ったら相手がガタガタと崩れた。そういう経験をしてきたからこそ、今回の鎮西はさすが。ひとつ抜けている強さを持ったチームだけあるな、と感心しました」
プレッシャーがかかる中、難しい試合を制した。1勝したのだから、きっと肩の荷も下りる。そのはずだった。
打倒・鎮西を徹底した東山
2日後の1月8日はダブルヘッダーという過酷な状況だった。鎮西は土浦日大を下して、東山との準々決勝を迎えたものの、昨年の悪夢が蘇る。
昨年は3回戦がフルセットまでもつれたことで準々決勝までの試合時間が1時間もなかった。十分な休息がとれず、対策も練られないまま、力を発揮しきれずに敗れた。だからこそ鬼門である準々決勝のダブルヘッダーに向けてこの1年間はトレーニングを十分に積んできた。
一方の東山もこの対戦を待ち望んでいた。昨秋の国民スポーツ大会決勝では一ノ瀬に得点を量産された。春高では一ノ瀬をどう封じるかを徹底的に研究し、対戦を想定してブロック、レシーブが連動した守備力を磨いてきた。
春高バレーという大舞台で、その成果を完璧な形で発揮したのは東山だった。


