箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「とにかく止まらんようにと…」箱根駅伝の青学大“神のいない山”に挑んだ無名のランナーを襲った“まさかの異変”「結局、誰にも言えなかったですけど…」
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byJIJI PRESS
posted2026/01/06 11:01
2017年の箱根駅伝で青学大初の3連覇に向けて往路優勝のゴールテープを切った貞永隆佑。その道中、貞永に起きていた“まさかの異変”とは…?
幸運だったのは、この年から5区の距離が変更され、前年より3キロほど短くなっていたことと、アクシデントが起きたのが最終盤だったことだった。残り2キロ程度を耐えればゴールにたどり着ける。もしこれが、5キロを残して……という状況であったならば、レース展開は全く別のものになっていたのかもしれない。
貞永は、何とか歩を進め芦ノ湖のゴールに辿り着いた。そのときには、タスキを受けた時点で1分半あった差は30秒にまで詰められていた。
「それでも先頭でゴールできた瞬間は、とにかくホッとしました。こういう状態だったので嬉しいとかよりも、とにかくホッとした。もちろん色々注目もされていましたし、後ろとの差はともかく、とにかく1番でゴールできたという事実が一番、安心させてくれました」
ADVERTISEMENT
それまでの2年間は“山の神”神野大地がほぼ、この5区で勝負を決めていた。そのダメ押しができなかったことで、復路のメンバーへの申し訳なさはあったという。一方で、復路を走る仲間の強さには全幅の信頼を置けてもいた。
「6区を走る小野田(勇次、2年)は前年から好走していましたし、7区・8区は田村(和希、3年)と下田(裕太、3年)という同期のエースがいましたから。先頭でスタートできれば、チームとしての戦力に自信はありました」
圧勝で箱根3連覇&3冠達成も…「悔しさが大きかった」
結局、貞永の言葉通り、翌日の復路は青学大の圧勝だった。
7区の田村こそ脱水症状で終盤にペースを落とし苦戦したものの、それ以外の4人は8区・下田の区間賞をはじめ、全員が危なげない走りを見せる。大手町のゴールにアンカーの安藤悠哉(4年)が先頭で帰ってきた時には、2位を走る東洋大との差は実に7分を超えていた。
チーム史上初となる箱根駅伝3連覇と、大学駅伝3冠の偉業。
その喜びを感じた一方で、貞永は自身の走りにはどうしても満足できなかった。レースの映像も、9年近くが経ったこの日の取材まで一度も見ることはなかったという。
「やっぱり悔しさが大きかったので。ちゃんと走れていれば、あと1分は早かったはずなんです。1区を走った梶谷とかに『貞永さん、いつもは下りめっちゃ速いのに。どうしたんですか?』とかいじられました(笑)」

