- #1
- #2
格闘技PRESSBACK NUMBER
佐山聡「お前、俺の顔を殴ってみろ」“地獄のシューティング合宿”壮絶スパルタ特訓の知られざる全貌…「ウァ~ッ」「グアァ~」現地で聞いた“悲鳴”
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph byMoritsuna Kimura/AFLO
posted2025/12/25 11:41
天才プロレスラーにして、総合格闘技のパイオニアでもある佐山聡。現在、世界中で使用されているオープンフィンガーグローブを考案した
「ウァ~ッ」「グアァ~」現地で聞いた悲鳴
時間が経つにつれ脱落者も出たが、佐山が甘やかす素振りを見せることは皆無だった。
「お前ら、何度言わせれば気が済むんだ!」
疲労が溜まってきたのだろう。2日目の午後の練習も後半になると、脱落者が急増した。参加者全員で腹筋運動をやっているときには、こんな場面に遭遇した。
ADVERTISEMENT
突如悲鳴が聞こえたと思いきや、左足を抱えながらのたうち回る者がいるではないか。あまりにも過酷な練習の積み重ねによって足が痙攣してしまったのだ。あるいは、肉離れを起こしていたのかもしれない。
その参加者は痛みが少々和らぐと、再び腹筋運動を行う素振りを見せた。だが、体が言うことを聞かない。どれほど「続けたい」と願っても、肉体は「もう無理だ」とSOSを発していた。
座り込む者がいた。流血する者がいた。汗まみれになった体を床に預けながら、激しい息づかいだけを生存のシグナルとして発する者もいた。それでも、佐山は練習のピッチを緩めない。反対に鬼の形相で訴えかけた。
「お前ら、自分がみじめにならないのか?」
もう威勢のいい「はい!」という返事はない。18時近くになると、参加者たちの口からは「ウァ~ッ」「グアァ~」という悲鳴しか聞こえてこなかった。
総合格闘技の明日のためなら、佐山は悪魔にもなれた。見てはいけないものを見てしまった。仕事でなければ逃げ出したい。そんな気分だった。MMA勃興前夜の阿鼻叫喚の向こう側に、格闘家の卵たちは何を見たのだろうか。
<前編とあわせてお読みください>
