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格闘技PRESSBACK NUMBER
佐山聡「お前、俺の顔を殴ってみろ」“地獄のシューティング合宿”壮絶スパルタ特訓の知られざる全貌…「ウァ~ッ」「グアァ~」現地で聞いた“悲鳴”
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph byMoritsuna Kimura/AFLO
posted2025/12/25 11:41
天才プロレスラーにして、総合格闘技のパイオニアでもある佐山聡。現在、世界中で使用されているオープンフィンガーグローブを考案した
落ち着いた口調で語っていると思いきや、佐山の口調は急に厳しくなり、「お前ら、このマットに全てをかけることができるか?」と鼓舞した。
「リングの中は戦争と一緒。ただ、ルールがあるだけなんだ。いざ男が、ましてやプロがリングに上がる以上勝たないといけない。いま頑張らないとダメなんだよ。俺が教えられるのは技術より心の方だ。わかったか?」
「はい!」
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参加者たちは元気よく声を揃えた。
常軌を逸した猛練習「さながら地獄の一歩手前」
合宿は2部制が敷かれており、6時の起床後、6時半からランニングが始まる。7時からは近くの神社の長く、急な階段を10往復し、ダッシュも織り交ぜられる。午後の練習は14時からスタート。それから18時ごろまで4時間ほど道場での練習になったが、ひとつひとつのメニューに多くの時間を割き、強度もこれ以上なく高かった。
タックルの打ち込み500回や、スクワット300回などは序の口で、佐山の解説を挟みながらシャドーボクシングをのべ1時間も続けるなど、他の格闘技ではちょっと考えられないような長さだった。
極めつきは筆者の滞在2日目に行われたステップワークの練習だった。フットワークを使いながら、半身の姿勢で前後、左右へと1時間休むことなく動き回る。
参加者たちの集中力が切れかかると、全てを見透かしたかのように佐山が声を張る。
「動くときに肩の力を入れるな」
体勢が崩れると、佐山から容赦ない叱咤が飛んだ。
「舐めてんのか、この野郎!」
誰ひとりとして、まったく手を抜けない。いくら単純な練習メニューとはいえ、それほど練度の高くないアマチュア選手が長時間ぶっ通しでやり続けるのは到底不可能だ。しかも練習はまだまだ続く。30分を超えると、倒れ込む者が続出した。それでも、みな震える足で立ち上がって続けようとする。「少しでも強くなりたい」という参加者たちの姿勢はリスペクトするほかなかったが、後にも先にもこれほど過酷な練習を見たことはない。足利工業大学付属高校の道場は、さながら地獄の一歩手前のような様相を呈していた。

