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原晋監督の妻が明かす、青学大のルール「配膳・掃除当番は平等」「箱根駅伝を走る選手も過保護に扱わない」 チームの結束力を強くする“寮生活のヒミツ”
text by

原美穂Miho Hara
photograph byAFLO
posted2026/01/03 06:01
箱根駅伝でも輝く、青学大の“絆”はいかにして生まれるのか?
“青学のエース”が泣いた理由
その一色君が涙を見せたのは、4年生として出場した出雲駅伝で優勝したあと、テレビのインタビューを受けていたときのことでした。出雲駅伝は三大駅伝の最初に行われる駅伝で、4年生にとって最後のシーズンの幕開けとなる重要な大会です。
わたしはその日、寮の食堂で、出雲に遠征しなかった学生と一緒にテレビで観戦していました。
優勝が決まり、アンカーとしてゴールテープを切って優勝した一色君は、タスキをつけたままインタビューにいつもどおり淡々と答えていました。その彼の表情が、インタビュアーから最上級生としての役割について質問を受け、「4年生として……」としゃべり出したとたんに歪み、その目からは涙がこぼれ落ちました。泣きながら、おえつをこらえながらインタビューに答えています。
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寮の食堂は、それまでのざわざわした雰囲気が一転し、静まりかえりました。あの一色が、泣くなんて。押し黙ったまま、誰もがそう思っていたに違いありません。
この日を境に、4年生の結束は強くなった
一色君が泣いたのは、うれしかったからでした。彼は入学以来、下級生として上級生の中に入って走り、いい結果を残してきました。けれど彼は、最上級生となった今度は、やはり同級生と走って成果を出したかったのです。この出雲駅伝では、アンカーの一色君の前を、同級生でキャプテンの安藤悠哉君が走り、その前をやはり同級生の茂木亮太君が走っていて、一色君には、1位でタスキが渡っていました。この代は、最強の学年として注目されていた1学年上の神野大地君、久保田和真君、小椋裕介君たちが卒業し、残された最上級生として相当大きなプレッシャーを受けていたのでしょう。
あんなにクールで、大きな大会を何度も走っている一色君でも、同級生とタスキをつないで勝ちたいと強く願っていたこと、それを特別なことだと考えていたことを、同級生はこのとき改めて知ったのでしょう。
この日を境に、4年生の結束はこの上なく強くなりました。そしてこの4年生が率いたチームが、駅伝三冠、箱根三連覇という偉業を成し遂げたのです。〈つづく〉
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