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女子陸上選手を狙う卑劣な盗撮「防ぎきれません。本当に困ったこと」“美女スプリンター”と呼ばれた市川華菜が今語る、現役選手が声を上げる“難しさ”
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矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO/Shiro Miyake
posted2025/12/19 11:04
トップスプリンターとして活躍してきた市川華菜さんが語る、人気の裏にあった葛藤とは
袋とじの表紙に、写真を無断使用された
取材を受けるのはもちろん利点もあるが、どこかで歯止めを掛けないと肝心の競技に影響が出てしまう。市川さんはこのように言う。
「当時の取材では陸上競技のことではなく、プライベート系のことばかり聞かれることもありました。取材されること自体はありがたいことなのですが、時には選手にとって負担になることもわかってもらいたいと思います」
スポーツ報道の線引きや肖像権の問題があいまいで、大会で盗撮された写真がスポーツ報道と無縁の雑誌に掲載されたり、オークションで売られたりすることも多々あった。
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最悪だったのはとある雑誌の袋とじの表紙に市川さんの競技中の写真が無断で使われた時だ。心配した家族がその雑誌を買って袋を開けてみると、中には見たことのない人のユニフォーム姿の写真があったという。
「私はそんなのを許可した覚えもないし、勝手に使われただけなのに、なぜか日本陸連から私が怒られたこともありました。それがすごく辛かったです」
結局は日本陸連が掲載した雑誌社に抗議をしたというが、すでに雑誌はコンビニや書店で売られており、取り返しのつかない状況。こうなってしまえば時すでに遅しで、何をどうしても市川さんの心労が拭い去られることはなかった。それに、よしんばそこで選手が何かを言ったとしても、それはそれで問題に巻き込まれてしまう危険があり、練習に集中できなくもなる。
現役選手が盗撮事象に抗議する“難しさ”
現在、中京大学陸上部のコーチの立場から市川さんはこのように言う。
「当時は現役選手なので、どう思われるかが怖いということも理由で何も言えませんでした。コーチになってからは、盗撮行為をしている人たちから一生懸命に陸上をやっている学生を守らなければいけない立場だと思っています」
市川さんによると、自身が学生だった今から15、16年前は試合会場の不自然な場所に持ち主不明の撮影機器が置かれてカメラが回っているなど、今となっては考えられないほど規制が緩かったという。


