オリンピックPRESSBACK NUMBER
一児の母、コーチになった元100m日本女王・市川華菜34歳の告白「変なプライドは全部捨てたんです」五輪出場、華やかな現役時代のウラにあった“挫折”
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byShiro Miyake/Asami Enomoto
posted2025/12/19 11:03
2021年に現役を引退し、現在は子育てをしながら中京大のコーチを務める市川華菜さん
400mに種目を変えたのと同時に、2013、2014年は母校の岡崎城西高校の生徒と一緒に練習し、基礎的な体力を取り戻していくことに取り組んだ。すると、徐々にいろいろなことが好転していった。
「スランプの時に思ったのは、変なプライドがあるから抜け出せないということでした。だからそういうのは全部捨てたんです。負けてもいいから、いつか勝とうと思ってがむしゃらに高校生と練習をしました。ケガをしたのが腰だったので(瞬発力を出す)100mは怖かったのですが、400mで本数を多く走るようにしたら結果が出るようになったんです」
市川さんが指導者を目指した“きっかけ”
市川さんは400mで自信をつかんだことにより、100mへの怖さもなくなったという。2014年には400mの自己ベストである54秒14をマークし、2017年には100mでも2011年に出した自己ベストと同じ11秒43をマークした。2017年は200mで23秒39の自己ベストも出している。
ADVERTISEMENT
「スランプを経験し、そこを抜け出せた時、多くの方々に支えられていることを心の底から感じました。その時の思いが、いずれは指導者になろうと思ったきっかけです」
市川さんはそのように語る。
五輪にも出場し、大きな注目を集めるスプリンターとなった市川さん。しかしスポットライトの裏では、試合直前まで続く取材や盗撮の問題に向き合っていた。続く第2回では、現役当時の知られざる苦悩が語られる。

