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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
小笠原慎之介「メジャー1年目のリアル」移動は格安航空券とバス、足りない食事「日本のお菓子をみんなに分けて…」「それを覚悟で挑戦している」
text by

山田結軌Yuki Yamada
photograph byGetty Images
posted2025/12/04 17:02
チームメートと仲睦まじくポーズをとる小笠原慎之介
「シン(慎之介)、次、いくぞ」
その流れでブルペンでのウォーミングアップが始まる。あるいは、肩はできあがり、いざマウンドに向かう。緊張感が一気に高まる瞬間、そこに電話のベル音が響く。もし打たれれば、頭にはマイナー降格がちらつく。天国と地獄を分ける、無情のベルだ。
「シンがいる」と思ってもらえるように…
今季ナショナルズは早々にポストシーズン争いから脱落した。しかし、だからと言って登板する投手が緊張やプレッシャーを感じないわけはない。小笠原の登板は、僅差の展開や勝利パターンの継投の場面は少ない。それでも、相手はメジャーリーガー。歴戦の強打者に立ち向かわなければいけない事実に変わりはない。楽に打ち取れる、という状況など一瞬たりともない。
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「(電話の音で)ビクッてすることは、実は自分にはけっこうプラスもあるんです。ビクッてしないように準備しておこう、と。ヨシ、といけるように。自分は緊張する状況で投げたいんだ、という気持ちがあるんだな、とも思うんです。
(電話が)鳴った瞬間、俺かも?!って思う。それって出番がある、投げる、という心構えがあるからなんだ、と。プレーボールから気持ちを整えて、先発がいつ降りても、崩れてもシンがいる、と思ってもらえるように。中継ぎになってからは、そう思ってブルペンにいます」
“便利屋”となって結果を…
役割は1イニング限定や、左打者との対戦が多い打順の場合、とは限らない。いつ、いかなる状況でも試合を壊さずにマネジメントしなければ、存在価値は保たれない。
中日時代のように先発投手の主戦を張るわけではない。いわば、便利屋。メジャーで投げるためには、とにかく結果を出し続けなければいけなかった。ピッチコムから自ら投げたい球種を選択し、捕手に伝えることも多かった。大きな弧を描くカーブは、メジャー平均よりも大きな変化量。パワーヒッターたちの目線を変え、タイミングを崩すために有効だった。今季は129球(22打席)を投げ、わずか被打率.100だった。
「必死に目の前の1アウトを積み重ねて、(首脳陣に)終わり、といわれるまで気は抜けない。1イニングで終わり、というわけにはいかないですから」
年俸など報酬や待遇だけが、小笠原がメジャーで投げ続けたい理由ではない。プレッシャーがかかるマウンド、勝敗を左右する場面で投げたい。それが、大きなモチベーションになっている。


