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「ムラッ気で不安定」“元バルサの問題児”に低評価だった仏名門誌編集長が…バロンドールに太鼓判「デンベレもヤマル18歳も卓越した才能だ」 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byEPA/JIJI PRESS

posted2025/11/30 17:00

「ムラッ気で不安定」“元バルサの問題児”に低評価だった仏名門誌編集長が…バロンドールに太鼓判「デンベレもヤマル18歳も卓越した才能だ」<Number Web> photograph by EPA/JIJI PRESS

2025年バロンドールを獲得したデンベレと2位に入ったヤマル。来年の北中米W杯メーンキャスト候補でもある

「それが盛り上がりに輪をかけた。出席者はもちろん、テレビで見ていた人々の多くが心から満足していた。デンベレの受賞そのものがひとつのストーリーだった。彼のバロンドールへの道のりは、もの凄く遠いところから始まった。私はデビューしたころから彼を見ている。才能は申し分なかったが、先に頭角を現したのは年下のエムバペだった。辿った経歴もエムバペとは違っていた」

――たしかに様々な困難がデンベレにはありました。

「幾度も大怪我を重ねたし、バルセロナ時代には色々と問題もあった。能力は高いが、ムラッ気で不安定というのが長い間の評価だった。2025年初頭までは私も彼がバロンドールを獲得するとは想像もしていなかった。ドリブラーで個人技は素晴らしいが、ゴール前の決定力はもの足りない。CLでも得点していたわけではなく……」

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――まだ覚醒してはいませんでした。

「生まれ変わったデンベレが、得点だけでなくアシストも量産し、PSGの躍進も始まった。高い潜在能力を持ちながら十分に発揮できずにいたデンベレの覚醒が、PSGをも目覚めさせた。PSGにはハキミをはじめ優れた選手がいる。そこにデンベレのパフォーマンス向上が、PSGを新たな次元へと導いた。だから彼のバロンドール受賞は当然と言える。彼のクラブへの影響力は疑いの余地がないのだから。デンベレはその意味で絶対的な存在だった」

18歳ヤマルも才能は卓越している

――たしかにデンベレが本命でしたが、それでも2位のヤマルとの差は僅かでした(デンベレ1380ポイント、ヤマル1059ポイント)。

「ヤマルはデンベレにないものを持っており、そのインパクトは常識を超えていた。18歳の彼には若さもあり、才能は卓越している。プレーは鳥肌が立つほどスペクタクルで、そのドリブルや突破は見るものを興奮させ感動を与える。メディアに与えるインパクトはデンベレよりも大きい。だからデンベレが本命だったが、ヤマルにも勝つ可能性があった。彼に欠けていたのはCLのタイトルだけだった。優勝していたら、彼も別次元の存在になっていただろう。バルサもまたリーガと国王杯、スーパーカップを獲得したのだから。

 ヤマルも終盤は素晴らしかったが、スタートは目立たなかった。リーガでも得点を量産したのは11月から3月にかけてだ。それでもシーズンを通して21得点22アシストは素晴らしいとしか言いようがない。CLではラウンド16以降、すべての対戦相手からゴールを決め、とりわけ準決勝のインテル戦の得点は印象深かった。

 だが結局のところ、デンベレの受賞は文句のつけようがない。100人の投票委員のうち73人がデンベレを1位に選んだ(ヤマルは11人)。つまり接戦ではなく、シーズンにおけるデンベレとヤマルの活躍度合を正確に反映した結果といえる」

PSG勢が総ナメ…当然と言える

――もうひとついえるのは、PSGがヨーロッパを制覇したことが結果に反映されました。バロンドールではトップ10に5人(デンベレとヴィチーニャ、ハキミ、ドンナルンマ、ヌーノ・メンデス)が入ったのに加え、ルイス・エンリケがヨハン・クライフトロフィー(最優秀監督賞)を、PSGも男子最優秀クラブ賞を受賞しました

【次ページ】 指揮官のネイマール切りが…

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