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「ムラッ気で不安定」“元バルサの問題児”に低評価だった仏名門誌編集長が…バロンドールに太鼓判「デンベレもヤマル18歳も卓越した才能だ」
posted2025/11/30 17:00
2025年バロンドールを獲得したデンベレと2位に入ったヤマル。来年の北中米W杯メーンキャスト候補でもある
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田村修一Shuichi Tamura
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EPA/JIJI PRESS
世界で最も権威ある個人賞であるバロンドールの表彰式は、9月22日にパリのシャトレ劇場でおこなわれた。
男子はオスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン=以下PSG)、女子はアイタナ・ボンマティ(バルセロナ)という、ともに本命の受賞。全13部門のうち、PSG(男子4部門)とバルセロナ(男子1部門と女子3部門)が最多の4つを獲得した。
北中米W杯を来年に控える中、男子はヨーロッパに新風が吹き、女子も数年前から様変わりしたヨーロッパの現状を示したこの結果を、主催者であるフランス・フットボール誌編集長のヴァンサン・ガルシア氏はどう見ているのだろうか。そのインタビューを掲載する。まずはその第1回から〈全3回/第2回に続く〉。
デンベレは不安げだった
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――表彰式後、体調を崩していたそうですが、具合はどうですか。
「ストレスは半端ではなく、バロンドールが終わってその反動、疲労が襲ってきた。だが今はもう平気だ。本当はもっと早くインタビューを受けたかったが申し訳なかった。デンベレの受賞はどう思ったか。君も投票したのか?」
――デンべレを1位にしました。2位はハキミで3位がペドリ、4位がヤマルだった気が……。
「手元にフランス・フットボール誌があるから見てみよう。たしかにデンベレ、ハキミ、ペドリの順だ。それからヤマル、ヴィチーニャ……順当な選択だ」
――ドンナルンマも入れようか随分迷いましたが、彼の代わりに10位にラフィーニャを選びました。まず、今年の全体的な印象から聞かせてください。
「正直な感想を言えば、表彰式の開催は簡単ではないということだ。今年も受賞者には事前に告知しなかった。式の進行も、出席者に結果を知らせないまま進めねばならなかったから、いろいろと大変だった。そのうえ前日に開催予定だったマルセイユ対PSGのリーグ戦が、雨のために1日延びて表彰式と重なった。その結果、ノミネートされていた多くのPSGの選手が欠席した。
そうした難しさはあったが、素晴らしい夜だった。デンベレやヤマル、ラフィーニャ、リバプールの選手など、主要な候補者のほぼ全員が出席した。スター選手が勢揃いし、セレモニーを盛り上げた。女子選手も多く出席したことにも満足している。50人を超える候補者たちがパリに集い、ここ最近では最も出席者が多く華やかだった。
セレモニー自体も素晴らしかった。こうしたイベントには感動も必要だが、最後の瞬間に盛り上がりが最高潮に達した。デンベレは本命視されていたが、名前を呼ばれるまで本人も確信できずに不安げだった。式の後で『最後までわからないのは本当にドキドキするよ』と彼に言われた。だからこそ受賞スピーチの言葉は心の底から出たもので、彼の正直な気持ちを表していた。友人たちも家族も感極まって、母親は涙を浮かべていた。感動的な瞬間だった。そうしたものこそ、この手のセレモニーに求められるものだからだ」
バルサ時代には色々と問題もあったが
――デンベレは6人目のフランス人受賞者でもありました。

