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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「近くに出たら部活を続けるわけにはいかない」“クマ問題”が学生野球に与える大打撃…球場の近くにも出没で「生徒たちの将来が変わってしまう」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/28 11:03
北海道では球場のすぐそばでのクマ目撃情報も。東北などの高校では部活動にも影響が出始めているという
「生徒たちの将来が変わってきてしまう」
現場をあずかる高校野球指導者の懸念は、もっと深刻に聞こえる。
「この先、来春にかけては、大学の推薦入学が内定する時期なんです。そこで存分なパフォーマンスを発揮できないとしたら、生徒たちの将来が変わってきてしまうでしょ」
2020年春に始まった「コロナ」の時期にも、移動自粛で大学の練習会にも思うように参加できず、志望を変えねばならなかったケースを何人も聞いて知っている。
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逆のケースとして、志望大学の練習会に参加できず、コロナ前から声をかけてくれた大学に進んだ結果、1年時からレギュラー出場の機会を得て、3年時にもう強豪社会人入社が内定するほどの捕手に台頭したケースも、実際にある。前出の高校野球指導者はこう続ける。
「クマについては、今年だけの問題じゃないですし、クマが出るのは、こっち(東北)だけじゃない。北信越や北関東の山に近い場所でも出る可能性はあると聞いています。もしかしたら、一地域だけのローカルな問題だけじゃなくなっているんじゃないか。そんな実感がしていますね。私、実際に、クマの姿見ているだけに」
いずれにしても、学校単位、地域単位での取り組みでは、球児たちが安心して野球部活動に向き合えるような手立てを見つけるのは、なかなかきびしそうだ。
たとえば、「出た時」に闘うわけにはいかないのだから、せめて「間違いのない逃げ方と逃げる場所」の指導だけでもできるように、全国レベルの組織をあげて、緊急の宿題として取り組まねばならない時期にさしかかっている。
実際に、クマとスレスレの共生をしながら、野球部活動に取り組む指導者たちの声を聞いて、切実にそう感じている。

