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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「近くに出たら部活を続けるわけにはいかない」“クマ問題”が学生野球に与える大打撃…球場の近くにも出没で「生徒たちの将来が変わってしまう」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/28 11:03
北海道では球場のすぐそばでのクマ目撃情報も。東北などの高校では部活動にも影響が出始めているという
「八戸学院大の敷地に出たっていうのもビックリしましたけど、もっとショックだったのは、花巻空港(岩手)の滑走路に出たでしょ。花巻東がすぐそこじゃないですか」
この秋の東北大会に優勝して、来春のセンバツ出場が有力視されている花巻東。
「僕らが注目している選手もいますし、この冬以降の練習量がクマのせいで思うようにならないなんてことになってほしくないですよね」
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同じ東北地方で、長く高校野球の指導に携わってきた監督さんの話が興味深かった。
「もともと北国の高校っていうのは、雪と寒さっていう強敵と戦いながら、いろんな工夫しながらやってきたんです。室内練習場がムリならビニールハウスとかね。そこに、また新しい強敵が現れた。クマも命にかかわる敵だけど、雪と寒さだって、取り組み方を間違えると命にかかわるんだ。やりようはあると思うよ」
具体性を欠いた精神論では……などと片付けられない説得力を、なぜか感じてしまった。
近くに出たら「部活動を続けるわけにはいかない」
「ただ実際問題として、学校やグラウンドの近くに出たら、部活動を続けるわけにはいかないですよね。特に練習の時間は放課後ですから。クマの行動時間に近い夕方から夜にかけてですしね。札幌だって、円山動物園に出ていますもんね。全道(大会)をやっている円山球場なんて、道一本隔てただけの向かい側ですから(※円山球場は現在、改装工事中)」
東北・北海道では、公式戦を行なう球場だって、市街地からちょっと離れた場所にあることが少なくない。森林公園、総合運動公園……球場のある環境は、動物にとっても快適そうな場所ばかりだ。
公式戦の開催が危ぶまれる状況になる可能性だって、ないわけじゃない。
「それ以前に、自分たちが危惧しているのが、日常の練習試合がやりにくくなることなんです」

