「大学ベストって…どういう意味？」日大→実業団で日本代表も経験…“現役時代は水泳一筋”東大水泳部に就任の新コーチが耳にした「衝撃の一言」 

　また、練習内容もそれまでは各自バラバラに行っていたメニューを、基本的に同じ日にやることは全員、同じにした。もちろん選手によって設定タイムや本数は変える。だが、同じメニューをこなすことでレベルの高い選手と同じ練習ができた達成感が出やすく、目標との距離も測りやすくなるからだ。

　加えて、選手同士ペアでの陸上トレーニングも導入した。押切の狙いは、選手同士のコミュニケーションをより活発化することだった。

「もともと力のある選手はぽつぽつといたんですが、なぜかチーム全体としての競技力が上がらなかった。そのウラには、各人の部への帰属意識の低さがあるように感じました。部員同士のコミュニケーション量も少なく、練習中の声かけや関わりも限られていた」

二人一組でのトレーニングでコミュニケーションの活発化を狙う　©Keiji Ishikawa

©Keiji Ishikawa

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　大学水泳には、インカレをはじめとしたチーム対抗戦もある。数人、突出した選手がいても勝つことはできない。だからこそ、まずは「部としての共通目標のため、それぞれが自分の役割を果たす」ことを重視した。また、代表クラスの選手などは例外として、当然ながら個人で行うトレーニングではどうしても追い込み切れないことが多くなる。そういった部分の解決にも繋がればと考えたのだ。

　決してドラスティックな改革をしたわけではない。だが、押切は部に生まれていた「小さな隙間」をコツコツと埋めていった。

選手が考える「東大生ゆえの強み」は？

　昨季、水泳部の主将を務めた4年生の持田隼人は入部当初をこんな風に振り返る。

「高校まで競泳はやっていたんですけど、都大会に出られるかどうか……くらいのレベルでした。大学でも続けるか迷っていたんですけど、最初の体験入部での練習がキツすぎて吐いちゃって（笑）。でも、かえってそれが悔しくて、続ける気になりました」　

　持田は今年9月の日本インカレに平泳ぎの100mと200mで出場している。特に100m平泳ぎは高校時代から考えれば10秒以上もタイムを縮める驚異的な成長を見せた選手だ。

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