「大学ベストって…どういう意味？」日大→実業団で日本代表も経験…“現役時代は水泳一筋”東大水泳部に就任の新コーチが耳にした「衝撃の一言」 

「目標を定めて、そこに向かってひとつずつ課題をクリアしていくというのは競泳も受験も結構、共通項はあると思います。東大の受験を突破している以上はそういう“努力できる力”はみんなある程度、高いんだと思います。

　あとやっぱり、悔しいと思う負けず嫌いな心はみんな強いような気がします。きつい練習でも、できない自分が許せなくて頑張っちゃうというか……そういうのは結構、受験期の勉強にも通じる要素なのかもしれません」

昨季の主将を務めた持田。100m平泳ぎと200m平泳ぎの2種目で日本インカレに出場している　©Keiji Ishikawa

　勉強とスポーツという分野こそ違えど、基本的にはどちらも物事を突き詰め、課題をクリアしていく作業である。そこにおいて悔しさという反骨芯は強固なバネになる。もちろんフィジカル面のセンスはあるとはいえ、基本的に受験勉強である程度の結果を出した面々にとって、その作業自体は得意ジャンルでもある。

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　そしてそれは、「ゴールへの筋道」を示せる押切のような存在にとっては、願ってもない状況だった。指針さえ示せば、全員が120%で応えてくれるのだ。それはコーチとしてはこれ以上ない喜びでもあった。

「非強豪の国立大」だからこそのメリット

　ただ、受験勉強は真面目に取り組めば比較的、右肩上がりに結果が出る。一方でスポーツの場合は停滞期と覚醒期が交互にやってくる。その停滞期にいかに目標を見失わずにトレーニングを続けるかというのが課題でもあった。

　その面においては国立大という環境がむしろプラスに働いたと持田は振り返る。

「いきなり日本インカレや日本選手権を目指せと言われてもなかなか現実味が湧かないんですけど、東大だと国立大という環境もあって、その前に七大戦（※全国七大学総合体育大会、旧帝国大学だった7校による対抗戦）や全国国公立大学選手権、関東インカレと段階を追って目標となる大会があるんです。そこで結果を残せればモチベーションにもなるし、次はもっと上のレベルの大会へ……と思える。そこは私立の強豪校ほどレベルが高くないからこそのメリットなのかもしれません」

国公立だけの全国大会や関東地区の大会なども主要な目標になるのは東大ならでは／水泳部公式HPより

　加えて幸運だったのは押切がコーチに就任した2022年、持田たちとともにたまたま後のエースになる平泳ぎの松本恭太郎が入学してきたことだった。

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