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「オオタニからMVPを奪えたら…奇跡と呼ぶしかない」米メディアが戦慄した“満票時代”のMVP論争…あるライバル選手「最後まで見てみよう」の虚しい現実
posted2025/11/18 06:00
両リーグを通じて3年連続4度目のMVPに輝いたドジャースの大谷翔平。その圧倒的な存在感をライバルたちはどう見たのだろうか
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一野洋Hiroshi Ichino
photograph by
Getty Images
誰も届かない。
それはもはや比喩ではなく、数字が証明する現実だ。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平が、2025年のナ・リーグMVPを満票で受賞した。両リーグを通じて3年連続、4度目の栄冠。通算4度の受賞は通算7度のバリー・ボンズ以来の快挙であり、しかも4度すべてが全会一致という、前例のない評価を得続けている。
MVPレースとは本来、「議論」や「異論」があってこそ成立する。
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だが、いまの大谷の前ではその余地がない。打率.282、55本塁打、OPS1.014。さらにはマウンドに戻り、今年はシーズン途中の復帰で1勝1敗ながら、47イニングで62奪三振。大谷にしかできない二刀流という概念が、既存の枠を破壊してしまった。
ライバルたちも脱帽の「大谷MVP」評価
おそらく今季、大谷の背中を最も近くで追ったのがフィラデルフィア・フィリーズのカイル・シュワーバー、そしてニューヨーク・メッツのフアン・ソトだろう。
「彼を見て、ボールの出所や変化球の動きを感じ取れるのは大きい。対戦相手を知ることはいつだって助けになる」
そう語ったのは、9月に「投手・大谷」と対戦した直後のシュワーバーだ。この試合でシュワーバーは大谷に対して2打数ノーヒットと、完全に封じ込められた。対峙した者にしか分からない恐怖と興奮のコメントの裏には「球筋を見たからといって攻略できるとは限らない」という挑戦者としての無力感さえにじむ。
そしてその懸念は現実になった。ポストシーズンの地区シリーズ1回戦でもシュワーバーは大谷に3打数ノーヒット、2三振と完敗。“慣れ”だけでは埋まらない壁がそこにはあった。

