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「オオタニからMVPを奪えたら…奇跡と呼ぶしかない」米メディアが戦慄した“満票時代”のMVP論争…あるライバル選手「最後まで見てみよう」の虚しい現実
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph byGetty Images
posted2025/11/18 06:00
両リーグを通じて3年連続4度目のMVPに輝いたドジャースの大谷翔平。その圧倒的な存在感をライバルたちはどう見たのだろうか
そして2018年ア・リーグMVPのムーキー・ベッツもこう口にしたことがある。
「自分がショウヘイより上とは言えない。彼が言うことがすべてで、僕らはその後をついていくしかない」
「彼は派手に振る舞うタイプじゃない。でも素晴らしいチームメイトで、彼がいるだけで雰囲気が変わる」
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MVP経験者が、別のMVPを“規格外”と評する。それは単なる賛辞ではなく、“仲間としての敬意”だ。エンゼルス時代は個の象徴だった大谷は、いまや勝利の中心としてチームを照らしている。
MLB公式や現地メディアもこの「異常事態」を驚きと称賛を交えて報じた。4度の満票はつまり、投票者全員が「他に名前を挙げる意味がない」と判断したということだ。2023年のコリー・シーガー、2024年のフランシスコ・リンドア、2025年のシュワーバーとソトのように、毎年挑戦者は現れる。だが、そのたびに票は一方向に吸い込まれ、静かに「満票」という結果だけが残った。
“大谷時代”のMVPは「レース」ではなく「儀式」
一方でそれは称賛と同時に恐怖でもある。かつてのMVPレースが議論の場だったとすれば、いまはもはや「儀式」に近くなっている。誰もが結果を知っており、誰もが納得してしまう。そんな時代を、MLB界は初めて経験しているのではないだろうか。
興味深いのは、現地SNSが切り取ったある瞬間だ。シーズン終盤、大谷が50号本塁打を放った夜、試合中にダグアウトでシュワーバーがその映像を見ていた。そんなシーンを、ドジャース寄りのメディアが投稿していた。画面越しに静かにうなずく姿に、称賛と諦め、そしてどこか誇らしげな感情が入り混じっていた。

