「もう即決でした。本当に楽しみでしかない」井上拓真が語る那須川天心との王座決定戦オファーを受けたワケ「自分としても、ここで戦う運命なのかなって」

「本当に楽しみでしかない」

　もう即決でした――。

　中谷潤人が返上したWBC世界バンタム級王座を争う決定戦。1位にランクされる那須川天心（帝拳）との対戦オファーを2位のWBA同級前王者・井上拓真（大橋）が受諾したことで、知名度抜群の2人によるカードが決定した（11月24日、トヨタアリーナ東京）。当初、拓真は同じく空位となっているIBF同級王座決定戦に照準を合わせているとの情報も出ていた。ならば回避して3位以下のランカーに渡すこともできた。IBF王座を先に獲ってから王座統一戦で戦うという陣営のプランもあったなかで大橋秀行会長からその話を聞いたとき、冒頭のコメントのとおり彼からすれば考えることも、迷うこともなかった。

「まさか（那須川との対戦に）なるとは思っていなかったので、ちょっとした驚きはありました。でもすぐに『やりたいです』と伝えました。だって絶対に盛り上がるカードじゃないですか。自分はそういう試合をやっていきたいので。モチベーションはこれまで以上に高いし、本当に楽しみでしかないですよ」

那須川天心との一戦を前に「モチベーションはこれまで以上に高い」と語る井上拓真　©️Takuya Sugiyama

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　充実ぶりは表情からもうかがえる。元々口数は多いほうではないが、一つひとつの言葉に力がみなぎっている。発表記者会見ではスーパーバンタム級4団体統一王者の兄、井上尚弥が「絶対に勝つからやらせてください」と弟の意思を援護射撃するエピソードが紹介されている。ただ、兄からその言葉を直接もらったわけではないという。

「多分ナオが感じたであろうことを会長に言ってくれただけ、ですね」

WBC世界バンタム級王座決定戦発表記者会見での那須川天心と井上拓真　©️AFLO

那須川天心との共通項と縁

　兄弟の思いをいつも尊重してくれる大橋会長も了承してくれた。小さいころから父・真吾氏の指導を受け、兄とともにボクシング漬けの日々を送ってきて今がある。昨年10月にインターハイで勝っていた堤聖也にリベンジされてWBA王座を失ってから1年。試合から遠ざかっているブランクがあり、かつ相手は“キックの神童”と呼ばれ、ボクシングに転向して世界ランカー相手にも勝ちを積み重ねてデビューから2年半、プロ8戦目で世界初挑戦する“伸び盛り”の那須川だ。機が熟すのを待つこともない。自らその機をつかみにいくというのも彼らしい。

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