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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「アフマダリエフの表情が変わった」じつは“試合開始20秒”に勝負の分け目…井上尚弥はいかに敗者の心をへし折ったか? 怪物と最も拳を交えた男の証言
posted2025/09/19 11:04
黒田雅之氏は、試合開始20秒で“勝負のターニングポイント”があったと語る
text by

森合正範Masanori Moriai
photograph by
Naoki Fukuda
インタビュー前編では、じつは“開始20秒”であった勝負のカギ、アフマダリエフ視点の“心が折れる感覚”などを解説してもらった。《NumberWebインタビュー全2回/後編に続く》
◆◆◆
「あからさまにアフマダリエフの表情が変わった」
――まずは試合の感想からお聞かせください。
「これは僕の勝手な期待だったんですけど、こういう足を使ったボクシングをやってほしかった。過去2試合、ファンの期待に応えて倒そうという意識から、攻め気が強すぎたような印象がありました。とはいえ、技術力の高いアフマダリエフを相手に、ここまで完封するのは想定外でしたが……」
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――以前から、井上選手のアウトボクシングを見たいとお話ししていましたね。
「井上選手のデビュー前からスーパーフライ級に上げる前まで、スパーリングをやっていたときの割合としては6-4でアウトボクシングのほうが多かったですからね」
――井上選手は新たな一面ではなく、元々あるスタイルだと強調していました。
「そうですね。僕からしたら、よく知っているスタイルです」
――アウトボクシングの詳しい話はのちほど聞くとして、勝負のポイントはどこにありましたか。
「まずは井上選手の最初のジャブですね。20秒過ぎくらいに出したジャブ。あれであからさまにアフマダリエフの表情が変わりました。井上選手のジャブは硬くて痛い。他の選手とは全然違うので、言ってしまうと、あのジャブで相手が前に出てくるのをストップできるんです」
「硬い何かで殴られた感覚」
井上がサウスポースタイルのアフマダリエフと向かい合う。試合開始20秒過ぎ、井上の鋭い左ジャブがアフマダリエフのガードの間を割って入り顔面にクリーンヒットした。この試合、初めて当たったパンチだった。
――アフマダリエフはおそらくジャブの速さと痛さに驚いた、と。勝負のカギはあの一発目のジャブですか。
「そう思います。グローブの感覚じゃないんですよ。毎度言っていますが、本当に拳の大きさの硬い何かで殴られた感覚なので、階級に関係なく誰でも驚くと思います」
――あれで主導権を握った、と。


