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「ロバーツ監督、ピッチャー交代が昔から下手…」疑問視していたNHK解説者が…思わず絶賛「佐々木朗希が完全復活するきっかけになった」あのロバーツ采配
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遠藤修哉Naoya Endo
photograph byGetty Images
posted2025/11/01 11:06
ポストシーズンにかけて復活したドジャース佐々木朗希(23歳)
「彼のスプリットが良い時は、真下にストンと落ちるか、わずかにスライダー気味に利き腕と反対方向に変化している。逆に調子が悪い時は、シュート気味にすっぽ抜けてしまう。あのボールの軌道一つで、その日の彼の状態がある程度分かる。ポストシーズンでは、ほとんどのボールが最高の軌道を描いていた」
あれは名采配「3回パーフェクト」
そして、佐々木覚醒の最大のターニングポイントとなったのが、ポストシーズンの勝負どころで見せたロバーツ監督の采配だった。「ピッチャー交代は昔から下手。投手の交代で落とした試合は少なくない」と普段、ロバーツ監督の継投策に厳しい目を向ける武田氏が、この時ばかりは手放しで称賛した。
「あれは監督のファインプレーですよ。本当に見事な采配でした」
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それは、リリーフ登板した佐々木を、セオリーを度外視して3イニング投げさせたフィリーズとの第4戦だった。実際武田氏も「投げても2イニングか」と考えていたという。シーズン後半、リリーフ陣が総崩れし、勝てる試合をことごとく落としたドジャースのブルペンは不安視されていた。
「先発のグラスノーは6回無失点に抑えたが、7回、継投したシーハンが打たれ、先制点を許した。次の8回はシーハンを引っ張らずに佐々木に代えたのは普通の采配です。ポストシーズンのような短期決戦では、1イニング限定でどんどんピッチャーをつぎ込んでいくのが定石だからね。すごいのはその後。ロバーツ監督は、あの場面で佐々木を信じて8、9、10回とイニング跨ぎをさせた。佐々木はそれに応えて完璧に抑えきった。正直、ブルペンが不安定で、他に投げさせる投手がいない、という台所事情もあったけど、あれで佐々木は、とてつもない達成感と『監督から全幅の信頼を置かれている』という自信を得たはず」
シーズン中、一部では「ロバーツ監督は佐々木を使いこなせていない」との批判もあった。しかし、この土壇場での決断が、監督と投手の間にあった見えない壁を取り払い、強固な信頼関係を築き上げた。
「投手というのは、ああいう経験一つで大きく化ける生き物。あの1試合が、佐々木にとって完全復活を遂げるための、大きなきっかけになったことは間違いない。シーズン中、マイナーで調整させた我慢が、最後に最高の結果として実を結んだ形でしょう」
心の弱さを克服し、技術を磨き上げ、そして指揮官の信頼を勝ち取った佐々木朗希。かつて「いじめ」とまで言われた逆風を、彼は自らの力で追い風に変えた。武田氏はこうも言った。
「今の彼を見てください。目力が全然違う。あれは自信を取り戻した証拠です」

