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「ミーティングの時間は短くなった」男子バレー“新旧監督”ティリとブランは何が違う? “右腕”伊藤健士コーチの証言「今年は新しい風を浴びる年だと」
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byYuki Suenaga
posted2025/10/31 17:03
選手に指示を送るバレーボール男子日本代表ロラン・ティリ監督。伊藤健士コーチ(右)は前監督フィリップ・ブランとの違いをどう感じていたのだろうか
「今年は“変革の年”。今まで僕らがやってきたことを押し付けるんじゃなく、ティリさんの色を出してもらう1年だと捉えて、監督の意向を尊重してやっていました。我々が『今まではこうだったから』と言ってしまうと、ティリ色がなくなってしまいますから。
(フィリップ・)ブランと8年間やっていて、我々の頭もバイアスがかかっているから、ティリさんの新しい風に当たったほうがいい。ブランのやり方が全部いいとは思わないし、僕らも一旦壁を取っ払って、ティリさんがフランス代表でやっていたことや、フィロソフィーを浴びようと。それは他のコーチにも説明しました。たぶん選手もそうだったんじゃないでしょうか」
ティリとブラン。フランス出身の2人の指揮官の違いを、伊藤はどう感じているのだろうか。
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「来たばかりの頃のフィリップ・ブランは、めちゃくちゃ難しいことを要求してきました」と苦笑しながらも、伊藤は懐かしそうに振り返る。
「例えば、アタックラインぐらいからクイックを使えとか。昔はそんなの使えなかったじゃないですか。でも我々ができなかっただけで、それが世界のスタンダードだったんです。
それまでの日本は、必殺技とか、よその国がやっていないことをしなきゃ勝てないと思い込んでいた。でもブランから、そうじゃないと学んだ。世界のトップがやっていることを日本ができれば、もともと我々のほうが器用だし技術力が高いんだから、世界と十分戦えるんだと、それを教えてくれた。『できることはまだまだあるはずだ』と言って、我々のステージを1個も2個も上げてくれたのがブランでした」
アタックライン付近からでもクイックを使う姿は、今では日本代表だけでなく、SVリーグでも見られるようになった。
一方で、ティリ監督の方針は“シンプル”だと伊藤は言う。


