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「ミーティングの時間は短くなった」男子バレー“新旧監督”ティリとブランは何が違う? “右腕”伊藤健士コーチの証言「今年は新しい風を浴びる年だと」 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byYuki Suenaga

posted2025/10/31 17:03

「ミーティングの時間は短くなった」男子バレー“新旧監督”ティリとブランは何が違う? “右腕”伊藤健士コーチの証言「今年は新しい風を浴びる年だと」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

選手に指示を送るバレーボール男子日本代表ロラン・ティリ監督。伊藤健士コーチ(右)は前監督フィリップ・ブランとの違いをどう感じていたのだろうか

「戦術に関しては、ブランの時に比べるとシンプルになりました。今のバレーはすごく進化していて、サーブも含めどんどん速くなっているから、考える時間がすごく短く、できることは限られる。その中で戦術を言い過ぎたら選手が動けなくなってしまう、というのがティリさんの考え。やることをシンプルにして、その分、精度を上げる。

 例えば、2本目の繋ぎのトスを、全員、誰が上げても精度高く、ネットに寄せて上げる。その再現性を高めることで、スパイカーはリバウンドを取ったり、ブロックアウトしたり、両手を使ったり、いろいろな選択肢を使える。『スパイカーの引き出しに鍵をかけるんじゃなく、いいトスを供給することで引き出しをいっぱい開けさせろ』と。やらなきゃいけないことを明確にして、それを追求し究極にしていくのがティリさん、という感じがします」

 相手の攻撃に対するブロックディフェンスで言えば、以前は日本のセッターが前衛か後衛かの違いや、相手セッターが動いてトスを上げた時の傾向など、大きく3つのパターンに分けて伝えていたが、ティリ監督の体制ではよりシンプルになり、ミーティングの時間も短くなった。

リビア戦ではベンチに“コーチ3人”配置

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「『いやいや、俺らもっとできるよ』とか『もうちょっと複雑でも対応できます』という選手もいたかもしれないし、『シンプルだからやりやすい』という選手もいたかもしれませんが、今年はみんな『どんな感じになるのかな?』と様子を窺いながらやっていたと思います」

 だが、来年からは違う。

「今年こうだったから、来年はこうしたいというものが、スタッフも選手もあると思う。今年は選手も主張をかなり控えていたと思いますが、来年は『俺たちはこうしたい』と、もっと主張してくるんじゃないか。トレーナー(S&Cコーチ アスレティックトレーナー)の村島(陽介)さんもそうでしょうし、我々コーチも」

 実は世界選手権でトルコ、カナダに連敗し、決勝ラウンド進出の可能性が絶たれたあと、早速変えたことがある。ベンチ入りスタッフの構成だ。今年はティリ監督の希望でベンチにドクターが入り、コーチは伊藤ともう1人、深津か坂梨のどちらかが入っていたが、第3戦のリビア戦からは、コーチが3人ベンチ入りすることにした。

「カナダ戦に負けて予選敗退が決まったので、今が変えるタイミングだと思って、ティリさんに進言しました。ベンチにコーチが3人いたほうが仕事を分担しやすくスムーズかなと思って。それまでは僕が試合中に通訳もしていたので、なかなか自分の仕事ができないところがあったんですが、リビア戦は坂梨に通訳を任せて、僕はいろいろ調べたり、選手に細かいことを伝えたり、そういうマネジメントに回りました」

 他にも練習方法などについて、「来年はこうしたらどうか」とコーチ陣で話し合っているという。

【次ページ】 「結果がすべて。来年が大事」

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