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「クボ、ミトマ、ミナミノ、ドウアン…今やサッカー大国だ」元日本代表監督トルシエがブラジル撃破に大喜び「アンチェロッティは何と言ったのか?」
posted2025/11/06 17:16
ビニシウス・ジュニオールと久保建英のマッチアップ。所属クラブでの日常の戦いから、日本代表選手はハイレベルな競争でタフになっている
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Kiichi Matsumoto
サッカー日本代表が歴史的初勝利を挙げたブラジル戦の翌日、東京スタジアムで現地観戦した元日本代表監督フィリップ・トルシエに話を聞いた。そのインタビューの第2回である(全3回/第3回に続く)。
ブラジル戦勝利は疑念や不安を払拭した
――前半を0-2で折り返したブラジル戦、日本代表は南野拓実のゴールで1点差にすると、伊東純也が日本にリズムを与えました。
「彼が違いを作り出した。すべてはブラジルDFのミスから始まったが、伊東の投入(54分)が試合の流れを完全に変えた。そのパスの能力と高度なテクニックで、伊東がコレクティブなプレーに新たな活力を与えた。中村の同点ゴール(62分)へのアシストも見事だったが、その後の上田綺世がゴールを捉えられなかったシュート(70分)へのアシストも彼だった。決勝点となった上田のゴール(71分)で、コーナーキックでクロスを送ったのも伊東だ。どれも印象深いものばかりだ。
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フランス人の指導者として私は、そこに日本とフランスの縁を感じざるを得ない。彼らの得点とアシストが、日本とフランスを繋いだ。フランス人であることが、誇らしくある瞬間だった」
――私も同じことを少し感じました。しかしブラジルのようなチームですら、一旦リズムを失うと回復は難しいのでしょうか?
「まずブラジルが、個の力をベースにしたチームであることを考慮すべきだ。それでも前半のブラジルは、カルロ・アンチェロッティというイタリア人監督の下で、組織的で規律あるプレーを実践した。ところが後半はフィジカルの低下も目立った。個の能力がどれだけ高くとも、スタミナが尽きれば脚が止まってしまう。
対する日本は後半に立て直し、組織的で規律に溢れアグレッシブだった。自分たちが運命を切り開けると信じていた。ブラジルにはそんなリズムはなく、消耗し尽くして回復は不可能だった。
この勝利で、日本はひとつの壁を突破したことを示した。その知性と野心は、世界サッカーのトップレベルに完全に融和した。選手たちがヨーロッパのクラブに移籍したからこそ実現したことで、彼らが日本人選手の国際的な評価を高めた結果だ。
またこの勝利は、不満の残ったメキシコ戦やパラグアイ戦の引き分けと、アメリカ戦の敗北で蓄積した疑念や不安を払拭するものだった。日本は失望をポジティブなエネルギーに変える方法を見出した」
日仏の縁が取り結んだ勝利でもあった
――ブラジル戦勝利の後では、10月シリーズはポジティブなものとして総括されますか?

