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「ブラジルDFのミス→ミナミノのゴールが転換点だ」元日本代表監督トルシエが現地観戦でズバリ「イトウが違いを作り出した」なぜ大逆転できたか
posted2025/11/06 17:15
劇的な展開でブラジル戦初勝利を挙げた日本代表。現地観戦したトルシエ氏は伊東純也を激賞した
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Kiichi Matsumoto
10月初旬に来日したフィリップ・トルシエは、日本サッカーの定点観測を継続的に続けている。10月10日のパラグアイ戦こそテレビ観戦となったものの、4日後のブラジル戦は東京スタジアムに出向き、日本がブラジルに初勝利を収めた歴史的な試合をその目で見届けた。
W杯本大会出場を世界最速で決め、次なる段階として臨んだ9月のアメリカ遠征シリーズと、パラグアイ戦で期待される結果を得られなかった日本代表が、ブラジルを相手に誰も予測できなかったパフォーマンスを披露した。もちろんその成果は素晴らしいが、9月からの一連の流れのなかで、全体としてはどう評価すべきなのか。来たる11月シリーズを含めたW杯への準備という点で、世界で最も時間を与えられた日本が、そのアドバンテージを有効に使っているのか。
ブラジル戦の翌日にトルシエに話を聞いた。そのインタビューを3回にわたって掲載する。まずはその第1回から。〈全3回/第2回に続く〉
ミナミノのゴールが試合を全く違うものに
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――まずはブラジル戦(3−2で日本の逆転勝利)の印象から。その後にこの10月シリーズの総括をお願いします。
「ブラジル戦の勝利は象徴的であり、輝かしい勝利、歴史的な勝利だった。そしてふたつの異なる顔があった」
――それは前半と後半の内容の違いのことですか?
「そうだ。前半はブラジルに大きく支配された。ブラジルは成熟しており、技術でも日本を大きく上回った。とりわけ個のレベルで、彼らは成熟し技術的に優れていた。そしてオーラを身にまとっていた。日本はしばしば自陣にブロックを下げ、ブラジルの侵入に耐えざるを得なかった。
ブラジルは自由にボールを回し、自分たちのリズムでプレーを実践することができた。経験の違いは明らかで、前半を見る限り日本が後半に巻き返せるとは想像できなかった。前半はブラジルが完全にゲームを支配し、自在にプレーをコントロールして加速化し、とりわけ個の力で日本の喉元にナイフを突きつけた。
日本はブラジルにコンプレックスを感じてはいなかったが、力の違いを見せつけられた。だがその力関係が、後半開始早々(52分)に起きたひとりのディフェンダー(ファブリシオ・ブルーノ)のミスでひっくり返った。単純なパスミスでボールを失い、南野拓実が簡単にゴールを決めた。それが試合をまったく違うものにしてしまった」

