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「この1勝は1.5勝の価値」ドジャース山本由伸の偉業・2連続完投勝利にNHK解説者が見た真価「勢いだけでない投球術」を発揮した“ある場面”
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小早川毅彦Takehiko Kobayakawa
photograph byGetty Images
posted2025/10/27 17:50
ポストシーズン2試合連続の完投勝利を挙げた山本。個人として素晴らしいのみならず、チームにとっても1勝以上の価値ある勝利、と小早川氏は激賞した
中盤から配球を変えて翻弄
序盤を乗り切ったことで、4回以降は初球からゾーン内の一見甘いところでどんどんストライクを取っていくという配球になってきたんです。この日はカーブが好調で、素晴らしいキレがあったので、相手が決め球のカーブを意識するようになってくると、序盤はカットされたりしていたスプリットがまた有効に生きてきました。
どんどん早めに追い込まれるので、ブルージェイズ打線も「積極的に粘る」余裕がなくなって、多彩な球種を打たされる場面が増えてきて。あれよあれよというまにアウトが積み重なっていきましたね。
ただこれも、調子が良くなってきたから勢いに任せてどんどん投げ込んでいった、という単純な話ではないでしょう。イニング間にめくっていることで話題の「山本ノート」ひとつ見ても明らかですが、山本投手はイニングごとに投手コーチと綿密に打ち合わせをして、打者の特徴や攻め方を確認しているんです。
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相手のケビン・ガーズマン投手も魔球といえるほどのスプリットを武器に投手戦が続いていましたが、この日は7回表に均衡が破れてドジャースが3-1とリードしました。その裏のことです。簡単に2アウトをとったところで、代打にボー・ビシェット選手が登場しました。2死走者なしという、一見なんでもない場面ですが、ここでマーク・プライアー投手コーチがマウンドに行って、また詳しく攻め方を打ち合わせていたんです。
細心の投球で特に打たれたくない打者を抑え込んだ
ビシェット選手は左膝の負傷から復帰してきたばかりですが、レギュラーシーズンで3割を打った中心打者。彼に打たれると、せっかくリードしたところで、またブルージェイズのチーム全体に活気が戻ってしまいます。それを防ぐべく、細心に細心を重ねて抑えていくぞ、という気構えがはっきり見えた瞬間でした。結果、ムーキー・ベッツ選手のファインプレーでしっかりと抑えきりましたね。

