「この1勝は1.5勝の価値」ドジャース山本由伸の偉業・2連続完投勝利にNHK解説者が見た真価「勢いだけでない投球術」を発揮した“ある場面” 

　ポイントを挙げるなら、やはり初回のピンチだったでしょうか。どんな好投手であっても、前日あれほど大勝して勢いのある打線相手ですから、立ち上がりから序盤は厳しいものです。実際に初回1番、2番と連打を浴びてしまい、無死一、三塁で絶好調の3番ブラディミール・ゲレーロJr.選手を迎えました。

大ピンチでゲレーロJr.に対して……

　ここで勢いづいている相手打線に火をつけてしまうと、大変なことになる。初回から勝負どころなのはもちろん、シリーズ全体の勝負どころでもあることが、やはり山本投手はわかっていました。ここで流れを止めないといけない、と。もう最初から、厳しいところに勝負球のスプリットを連投していきましたね。ゲレーロJr.選手もファウルで粘ったんですが、最後はカーブで空振り三振に仕留めました。

　ただ、ゲレーロJr.選手はじめ、ブルージェイズ打線はとにかくなかなか空振りしてくれませんでした。ボールをじっくり見極めるということでもなくて、積極的にスイングを仕掛けてくるんですが、低めのスプリットも高めのフォーシームも、なんとかバットに当ててファウルにしてきます。球数を投げさせて、根負けさせよう、そして四球やヒットからチャンスを広げていくぞ、というアプローチが打線全体に見てとれました。これはシーズン中からですが、ブルージェイズ打線は本当に三振しない打線なんです。

絶好調のゲレーロJr.も要所で抑えて打線の爆発を許さなかった　©Getty Images

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　しかしその打線に対して、このあと前日ホームランを放っている2人、アレハンドロ・カーク選手は低めを打たせて一塁ライナー、ドールトン・バーショ選手はカーブで見逃し三振。まさに山本投手の力と技でこの大ピンチをしのいだわけです。

　序盤、初球から厳しいコース、厳しいコースを攻めるという投球だったので、3回にはジョージ・スプリンガー選手のインサイドをついた初球の直球が死球になり、ゲレーロJr選手にもインコースを引っ張られたヒットで、ピンチが広がりました。ただ、ここも犠牲フライの最少失点で同点止まりに抑えてから、山本投手がだんだん組み立ても変えてきましたね。

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