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山本由伸、メジャー仕様のPS無双「68球で被安打ゼロ」魔球に正捕手スミスとの“相性問題”も解消でハグ…次も完投ならドジャース伝説エース再現
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byDaniel Shirey/Getty Images
posted2025/10/27 17:00
山本由伸はポストシーズン2試合連続完投勝利の快挙を成し遂げた
フォーシーム、スプリッター、カッター、シンカーはすべて150km/h前後の球速。同じ球筋から右、左、下に変化する。相手打者はそれを追う中で、ゾーンに収まるカーブに手玉にとられた印象だ。速球系の変化球のレベルが極めて高い上に、切れの良いカーブが決まっていた。
〈10月25日 ブルージェイズ戦〉
105球(77球/空振15)
スプリッター34球(24球/空振5)
平均147.1km/h 1316回転
フォーシーム25球(20球/空振3)
平均154.9km/h 2210回転
カーブ23球(16球/空振4)
平均123.8km/h 2748回転
カッター13球(10球/空振2)
平均146.8km/h 2451回転
スライダー6球(4球/空振1)
平均142.2km/h 2630回転
シンカー4球(3球/空振0)
平均153.2km/h 2287回転
フォーシームの最速は157.6km/h。ブルワーズ戦とほぼ同じ組み立てだったが球数はさらに減っている。極めて効率の良い投球ができている証拠だ。特にスプリッターの威力が強烈で、2試合で68球を投げて1本も安打を許していない。
正捕手スミスとの“相性問題”も今や昔
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この2試合の捕手は正捕手のウィル・スミス、昨年は強気のリードだったスミスとの相性が良いとは言えず、2番手捕手のオースティン・バーンズと組んだ試合の方が好成績だったが、バーンズは今季中に退団。ブルージェイズ戦の完投後にハグをかわしたスミスとの息も合って、好投を続けている。
山本の投球を見て印象的なのは、NPBにはなかった「ピッチクロック」に完璧に適応している点だ。「無走者で15秒」という「時間」が完全に体の中に入っていて、その中でリズミカルな投球ができるようになっている。
ワールドシリーズ初戦でスネルが6回につかまり、後続投手が満塁ホームランを打たれるなど一挙9失点。強打のブルージェイズ打線を目覚めさせてしまったが、山本はこれをあっという間に眠らせた。この功績は非常に大きい。この形で本拠地に戻れるのは、ドジャースには願ってもないことだ。
初戦の炎上でもわかるように、ドジャースの救援陣は佐々木朗希を除いて極めて頼りない。彼らを使わずに勝てたのも大きかった。
伝説のエース、ハーシュハイザーの再現なるか
ドジャースの投手がワールドシリーズで完投したのは、1988年のオーレル・ハーシュハイザー以来。彼はアスレチックスを相手に第2戦、第5戦で完投している。山本の次の登板も第5戦になりそうだが、サイ・ヤング賞投手で伝説のエース、オーレル・ハーシュハイザーの再現が期待されるところだ。
〈ドジャースと由伸、大谷、朗希特集:つづく〉

