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中日ドラ1指名“東都最強投手”青学大・中西聖輝とは何者か? 高校時代にあのレジェンドから「ちゃんとやってよ」…ようやくわかった「言葉の意味」
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田口元義Genki Taguchi
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/10/23 20:34
中日からドラフト1位指名を受けた青学大の中西聖輝。智弁和歌山高校時代にはあのレジェンドから指導も
だからと言って鮮烈に響いたわけではない。ただ、イチローが説いた指標が中西の意識に根付いていく。その代表例が大学進学だ。
3年夏の甲子園で智辯和歌山のエースとして3試合に登板し、防御率0.38の抜群の安定感でチームを4度目の全国制覇へと導いたエースはこのとき、高校からのプロを目指していた。「なにがなんでも」と自分の意志を貫けば、おそらくはこの年のドラフト会議で名前を呼ばれたに違いない。
しかし中西は、目の前にぶら下がる夢を安易につかもうとはしなかった。一旦、立ち止まり、自らの立ち位置を冷静に分析する。
高卒でプロ志望届を出さなかった理由は…?
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同世代には和歌山でしのぎを削りあった市和歌山の小園健太に高知の森木大智、ノースアジア大明桜の風間球打の「高校ビッグ3」。天理の長身右腕の達孝太など好投手が多い。彼らと自分の力を比較した際に、中西は「プロは時期尚早だ」と思えたというのだ。
「小園とか達君とかを見たときに、自分は根本的な能力で敵わないというか、まだまだ足りない部分が多くあると思いました」
そして中西は、監督の中谷仁との相談を経て「大学で4年かけてレベルアップして、1位でプロに行く」と、青山学院大に進んだ。
「あとがない」と退路を断つ。不退転の決意を課すと、自分の甘さが見えてくる。
あと1本、あと1球――高校までは追い込みが足りなかったのだと自戒する。イチローが指し示した「厳しき道」の先に、「ちゃんとやってよ」の真意が見えるようになった。

