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「瀬古歩夢が断った“破格オファー”の真相」日本人代理人が告白…今夏、菅原由勢ら5人の移籍を実現させた男が明かす「交渉で10回はケンカした」
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木崎伸也Shinya Kizaki
posted2025/10/25 11:28
8月26日、英2部サウサンプトンから独1部ブレーメンへレンタル移籍した菅原由勢(25歳)。写真左が代理人の龍後昌弥
「瀬古選手は昨季いっぱいでスイス1部のグラスホッパー・チューリッヒを退団し、早い段階で5大リーグではない強豪チームから破格の条件でオファーが来たんですね。ただ、日本代表の森保一監督は『5大リーグなど高いレベルでプレーすること』を選手たちに求めている。瀬古選手ははっきりした男で、彼から唯一言われていたのは『5大リーグにこだわりたい。5大リーグのどこかに放り込んでくれさえすれば絶対にやれるから』とだけ私に言っていました。そして迷うことなく、破格のオファーを断りました。
そんな中、会社の同僚がフランス1部のルアーブルがセンターバックを探しているところにプッシュをし、オファーを持ってきたんです。すぐにオンラインミーティングを設定すると、ルアーブルの監督は『技術の高さはもちろん、複数のポジションをできることも評価している。主軸になって欲しい』と瀬古選手を口説きました。ルアーブルの試合を見ても、ボールを大事にするいいサッカーをしており、瀬古選手も即決でしたね。すでに監督とも信頼関係ができており、日本代表のアメリカ遠征から帰ってきたときは、『疲労を考慮してベンチスタートを考えているけど、いいか。出たいなら先発させるが』と言われたそうです」
「今夏、交渉で10回くらいケンカした」
近年、オイルマネーや放映権マネーにより、移籍市場は国境をまたいでますます複雑になっている。代理人事務所が大型化するのは必然だったのだろう。
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ただし、いくら大手に規模の強みがあるといっても、最後はやはり人と人の交渉だ。個の力が求められるのは、ゴール前と同じである。
この夏、龍後は対面や電話越しに声を荒げ、“喧嘩”をしたことが何度もあったという。
「交渉が加熱すると、めちゃくちゃ喧嘩するんですよ。この夏は強化責任者に10回くらい激怒したかな(笑)。たとえば、放出側クラブの移籍金やレンタル料の要求額が高かったり、獲得側が提示する給料が低かったり。日本人ということでなめられている部分があるとしたら、それを覆していく必要がある。駆け引きで電話を切ることもあります。
信頼関係のある、頻繁に会食する友人とも呼べるGMとでもバチバチの喧嘩をしましたよ。『選手のことを考えていると言っているが、その要求金額はまったく考えてないじゃないか!』という感じで。その2時間後に電話がかかってきたので僕から『熱くなっちゃった』と伝えると、『フットボールの世界では当たり前だ。俺もしょっちゅうそんな感じだ』と言ってました。次に会ったときにわだかまりなく『元気か?』と握手してきました。
買い手、売り手の両クラブ、選手、それぞれの意向を移籍市場のデッドラインがある中で一つにまとめないといけない、その難しさが常にありますね。先方は言いたいことを言ってくるので、こちらも言いたいことを言う。選手のために戦える代理人が必要だと思います」
菅原が「1カ月くらい休んだ方がいいよ…」
龍後は着実にディール数を増やしており、『Sports360』ではアジア責任者を任されるようになった。
「うちの会長も過去に2度、買収のオファーがあったと言ってました。オファーの値段も教えてくれましたが、それはとんでもない額でした。それでも断った。誰かに指図されながら仕事したくないからだと。そんな会長のポリシーが会社の中に浸透していると思います」
6月中旬、菅原がハワイで結婚式を挙げ、龍後も瀬古や久保らとともに参列した。


