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CS最終戦で決勝打「スーパーサブ“以上”の脇役」愛される男・ソフトバンク川瀬晃スタメン起用の真相…小久保裕紀監督「最後は、俺が決める」 

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喜瀬雅則

喜瀬雅則Masanori Kise

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/10/21 18:31

CS最終戦で決勝打「スーパーサブ“以上”の脇役」愛される男・ソフトバンク川瀬晃スタメン起用の真相…小久保裕紀監督「最後は、俺が決める」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

クライマックスシリーズ第6戦で勝ち越し打を放った殊勲の川瀬。小久保監督が川瀬の名をオーダー表に書き込んだ真意とは

「今日は、僕がする」

 ソフトバンクは、試合ごとのスタメンに関して、まず打撃コーチの村上隆行が、その素案を決め、小久保がそれを了承する形で決定する。ベンチ裏にある、最新鋭の打撃マシン「トラジェクトアーク」は、相手投手の球種、コース、球速など、事細かなデータを入力するとその映像とともに、投球が“完コピ”される。その模擬対戦での状況を村上がチェックした上で、過去の対戦データなども踏まえて、その日の打順を組んでいくのだ。

第6戦、打順は俺が決める

 最終決定は、もちろん小久保の権限だ。一方で、各部門のコーチが出してくる案を最大限尊重するのも、小久保のポリシーである。それでも、最後の最後、試合の勝敗が2025年のソフトバンクの“運命”を決める一戦を前に、小久保はすべての責任を負うという、悲壮な決意を固めたのだ。

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 第6戦、打順は俺が決める——。小久保の野球脳が、フル回転した。

「一番、最初に書いたオーダーです」

 左わき腹痛の近藤健介、第4戦の走塁中に転倒した際に頭部を強打した中村晃。打線の中心になる2人を欠く中、レギュラーシーズンを含めた今季149試合目にして、初めてとなる“並び”だった。

 1(8)周東、2(6)川瀬、3(9)柳町、4(7)柳田、5(3)栗原、6(D)山川、7(5)野村、8(2)海野、9(4)牧原大

 もう一案、実は浮かんだのだという。

「迷ったんですけど、やっぱり、最初のやつで行こうと」

今季初のオーダーが的中した

 この“2025年・初オーダー”が、見事なまでに的中したのが、勝ち越し、そして結果的に決勝点となる2点目をたたき出した5回の攻撃だった。

 2死一塁から、9番に入った牧原大成が、3回に続く2打席連続安打を中前へ。2010年育成ドラフト5位でのプロ入りから、今季15年目。育成出身者として初の首位打者に輝いた苦労人は、第5戦まで15打席連続無安打の大不振に「首位打者を取ったからこそ『打たなきゃいけない』というプレッシャーを自分にかけていました」。その“呪縛”が解けたかのような一打でチャンスを広げると、続く1番・周東佑京が遊撃内野安打で続いた。

【次ページ】 “切り札”川瀬晃という男

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