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「ベッツは毎日とんでもない努力してる」ドジャースを象徴する“天才”の知られざる裏の顔…ぶっつけ本番で“あの神プレー”が生まれた本当の理由
posted2025/10/17 06:06
ゴールドグラブ賞・遊撃手部門のファイナリストに名を連ねたムーキー・ベッツ(33歳)。右翼手としては過去に6度受賞している
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杉浦大介Daisuke Sugiura
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Getty Images
2年連続世界一を目指すドジャースは今秋、総合力の高さを感じさせる形でプレーオフを勝ち上がっている。スター軍団同士の対戦として注目されたフィリーズとの地区シリーズは期待通りの好勝負となったが、最終的には3つの接戦を制したドジャースの完勝。さらにブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズも敵地で2連勝し、いよいよワールドシリーズ進出が視界に入ってきた。
フィリーズを沈めた“ホイールプレー”
ここまでのポストシーズンの戦いを振り返るなかで、ドジャースの深みと強さを印象付けた象徴的なプレーがある。フィリーズとの地区シリーズ第2戦、その勝負を分ける分岐点となった“ホイールプレー”だ。4−3と1点をリードして迎えた9回裏無死二塁で内野陣が敢行し、見事なバントシフトを成功させた。
フィリーズの7番打者ブライソン・ストットが三塁前に犠牲バントを試みるも、極端な前進守備を敷いたマックス・マンシー三塁手が間髪入れずに三塁に送球する。三塁カバーに入ったムーキー・ベッツ遊撃手が二塁走者のニック・カステラノスを悠々とタッチアウト。フィリーズの追撃ムードは途切れ、この時期の騒がしさで知られるシチズンズバンク・パークは静まり返った。
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マンシーは後に「プレーの発案者はムーキーだった」と明かし、左腕アレックス・べシアに投手が交代した時に「“ホイールプレーでいこう”と言ってきた。それを完璧にこなせた」と振り返った。当のベッツは「同点にされたら完全に流れが相手にいくと思って試みた」と決断に至った背景を説明した。実際にこのプレーの持つ意味は計り知れないほど大きかったように思える。
1−4で最終回を迎えたものの、この時点まで3連打を放っていたフィリーズは完全に押せ押せムード。ストットの後に打席に立ったハリソン・ベイダーも左前打を放っている。ドジャースは前の試合でも登板した新守護神の佐々木朗希をなるべく起用したくない状況で(結局、佐々木は9回2死から登板し、最後の1アウトを奪うことになるのだが)、あのバントが成功していたら少なくとも同点にされていた可能性は極めて高かった。その流れを寸断したのが“ホイールプレー”だったのだ。

